埼玉新聞

 

<新型コロナ>もう疲れ切っちゃった…緊急宣言の延長、飲食店から悲鳴 売上半分以下、補助金に不公平感

  • 緊急宣言の延長、飲食店から悲鳴

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言は2日、10都府県で最長1カ月の延長が決まった。時短営業を続ける飲食店からは悲鳴が相次ぎ、日常生活はさらなる我慢を強いられる。「大変申し訳ない」。菅義偉首相は陳謝したが、政府の対策は後手に回り、与党議員の「夜の銀座」問題も明らかになった。「これで感染が収まるのか」。国民に不満と失望が広がった。

 「緊急事態宣言は延びると思っていた」。埼玉県長瀞町長瀞で老舗旅館「長生館」を営む小埜和也常務(44)は冷静な様子で語った。緊急事態宣言の延長も見込み、1月11日から3月12日までは月曜から木曜の宿泊を休業している。「新型コロナウイルスをもう一段階抑え込むため、もう少し我慢したい」と話した。

 川越市仲町の「マツザキスポーツ」店主松崎正裕さん(48)も延長に賛成を示す。「平日の人通りは減ったが、土日は若者を中心に多くの人が外出している。感染者数は日に日に減ってきているが、再拡大を防ぐためには、1回目の宣言のように、規制を強める必要があるのではないか」と話す。

 ただ、外出自粛や時短営業の影響は冬の寒さのようにひしひしと身に染みる。酒と米の販売をしている上尾市の須田商店の須田悦正さん(48)は「いやあ、厳しいです。もう疲れ切っちゃって」。酒類の売り上げは前年比で4割ほどしかなく、米は飲食店への納品の落ち込みを店頭販売でカバーして何とか雇用を維持しているという。「去年の緊急事態宣言の時は飲食店を応援しなきゃという前向きな雰囲気があったけれど、今回はモチベーションが低い。まして延長で暗い気持ち」。

 須田さんが肌で感じている空気には飲食店への補助金の問題がある。食品の納入業者や下請けの運送業者などに不公平感が漂っているという。「酒の蔵元や農家も厳しい。みんな連鎖しているから、飲食店にお客さんがたくさん入ればそれが一番いいはずなんですけどねえ」と複雑な心境を吐露した。

 杉戸町で衣料品店を営んでいる男性(63)は「緊急事態宣言によりさらに客足が遠のき、昨年比で売り上げは半分以下とかなり厳しい状況だ」と話す。同じ商店会の中でも食品を扱う若手経営者は店舗だけでなく移動販売も手掛けるなど工夫しているが、全般的には打つ手がなく諦めの境地に至っているという。

 「うちは学生服も扱っているので、寸法取りをする際、従来であれば体育館などに集まってもらい一回で処理することができた。延長されれば密を避けるため、店舗で人数制限をしながら何回かに分けて対応することになるので、周辺にも迷惑が掛かることなどが懸念される」

ツイート シェア シェア