やめて…高さ14メートルの桜3本、伐採する計画が進む 反対署名は1万筆超に 東武アーバンパークライン七里駅を見つめてきた桜、周辺は開発工事…駅舎は橋上化されて通路開通、ロータリーもできて迫る伐採
さいたま市見沼区の東武アーバンパークライン七里駅北口の線路沿いに立つ3本の桜の木を伐採計画から守ろうと、市民団体が集めてきた署名が目標の1万筆を超えた。一方、同所の桜は全国的にも珍しい樹形であることが専門家の調べで分かった。「七里の桜を守る会」会長の井上陽子さん(77)らは近く、署名を添えて、清水勇人市長に伐採をやめるよう嘆願書を出すことにしている。
3本の桜は、高さ14メートルほどで、樹齢は80年ぐらい。ソメイヨシノでありながら根元から幹が分かれた株立ちの樹形をしている。幾本にも分かれた太い幹周りは2メートル以上あり、約20メートル先の駅ホームへ届くほどに枝を伸ばしている。
同会によると、2020年の同駅北側区画整理事業で、桜の木は伐採される計画だったという。その後、桜は伐採されずに開発工事が進み、駅舎は橋上化され、3月31日には自由通路も開通。北口が開設され、駅前にロータリーもできた。桜も開花し、駅利用者を癒やしている。しかし、市の土地区画整理組合は、引き続き桜の木を伐採する方向で計画を進めていることを同会に明らかにしたという。
3月末に同会が駅前で開いた桜祭りでは、署名が1万566筆集まったと報告があったほか、全国各地の桜を調査している樹木医の玉木恭介氏が同所の桜の希少性を解説した。玉木氏は、同所の桜は長年手つかずだったために腐葉土が堆積して栄養状態もよく、加えて線路にある砂利が水はけを促したと指摘。「この場所にあったことで、健康状態がすこぶる良好に維持され、現在の樹形を作ったのだろう」と話した。加えて、「駅前の桜がこのまちの環境指標となる。この状態を大切に守ってほしい」と強調した。
同会は今後、管轄する市土地区画整理組合と話し合いを持ち、小規模公園などとして3本の桜を同所に残すよう働きかけることにしている。
祭りに駆け付けた大宮区の渕田淑子さんは「七里のシンボルツリーで、存在感いっぱい。あちこちで大きな木が切られているが、とても不安」。北口のオープン当日に友人と訪れた近所に住む武藤日陽さん(17)は、「駅からも咲いているのが見える。七里駅の特徴なので残してほしい」と話した。