埼玉新聞

 

五輪組織委・森会長が辞任 後任要請に違和感…県内の聖火ランナーら声「発言で辞退しない」「致し方ない」

  • 県内58市町と県庁で巡回展示される東京五輪の聖火リレートーチ(県提供)

 身内に向けた説明だけで記者会見を開かず、自ら幕を引いた。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が12日、辞任を表明した。組織委会合でのあいさつは大会へ関わることへの未練と自己弁護が目立ち、差別意識を向けた女性への謝罪は最後までなかった。透明性を欠いた会長職の「禅譲」は白紙となり、混迷はさらに深まった。

■「辞退はしない」/聖火ランナー・大谷さん

 聖火ランナーを務める日本骨髄バンク評議員の大谷貴子さん(59)=加須市=は「白血病だった私が元気に走る姿を見てもらおうと思っているので、発言によって辞退はしない。(競泳の)池江璃花子さんのように元気な姿を見たら、多くの白血病やがん患者さんが喜ぶと思う」と語った。

 森喜朗氏の辞意が明らかになる前には、「発言は論外。辞めざるを得ないでしょう」と指摘していた。森氏が川淵三郎氏に後任を要請したとの報道を見て、大谷さんは「前任者が後任者を(事実上)決めるのに違和感がある。時間がないのは分かるが、組織委員会がオンライン会議でも開いて協議し、皆で決めたら良かった」と話していた。

 さいたま市では東京五輪のサッカーとバスケットボールが開催される。市オリンピック・パラリンピック部によると、8日に組織委員会から「森会長の発言は不適切」として謝罪のメールが届いた。「多様性と調和は東京大会の核の一つ、ジェンダーの平等は基本的原則の一つ。引き続き人種、性別、性的指向、宗教、政治、障害などあらゆる面での違いを尊重し、受け入れる大会を運営しますので、引き続き協力をお願いします」という内容だったという。

 担当者は「開催準備を長く続けてきた。引き続き粛々と、新型コロナウイルスの感染状況を注視しながら、準備を進めていく」としている。

■理念説明できる人を/大野知事

 大野元裕知事は12日の定例記者会見で、女性蔑視の発言の責任を取って森喜朗会長が辞任を表明したことについて「ご本人の判断ではあるが、(辞任は)致し方ない」と述べた。知事は「五輪のコンセプト、大会のビジョンの中にも多様性と調和という言葉がある」とし、「これは大変大切で共有すべきもの。組織委の長は大会の理念、スローガンをしっかりと胸を張って説明できる人であるべき」と話した。

■辞任はやむを得ない/清水勇人さいたま市長

 (発言は)五輪・パラリンピックの精神に反する不適切なものであり、辞任はやむを得ないと考えています。一日も早く透明性と正当なプロセスを持って新会長を選出していただき、大会ビジョンの「多様性と調和」を念頭に置いて、開催準備を進めていただきたい。

■「言わない方が良かったのでは」/藤本所沢市長

 五輪組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言について、所沢市の藤本正人市長は12日の定例会見で「発言を全て把握しているわけではないので分からないが、(女性蔑視という)そういう趣旨で発言したなら言わない方が良かったのではないか」とコメントした。

 同市はイタリアのホストタウンで、2017年10月に行われた事前合宿を市内で行うとする覚書締結式には藤本市長と共に森会長も来賓として出席していた。

ツイート シェア シェア