埼玉県と川口市を除く…県内62市町村がパートナーシップ連携協定締結式 当事者「理解の深まり、うれしい」
川口市を除く埼玉県内62市町村は12日、性的少数者(LGBTなど)のパートナーシップ制度の連携協定を締結した。さいたま市浦和区で行われた締結式で、発案者の川合善明川越市長は「パートナーシップ制度利用者の転居の際の手続きを簡略化し、負担軽減や利便性向上を図る。多様性を尊重する社会の推進に寄与すると考えている」とあいさつした。締結式には56市町村の首長や代理が出席した。
これまでは転出の際、宣誓書受領証などを返還し、転入先で住民票の写しや婚姻していないことを証明する書類を再提出する必要があった。協定により、自治体ごとのパートナーシップ制度の内容にもよるが、返還手続きが不要になったり、本人確認書類などの提示により宣誓書受領証の交付が受けられたりするなど簡易な手続きが可能となる。
川合市長は報道陣の取材に「転居の際に同じ手続きをするのは煩わしい」と自治体間の連携の重要性を強調。パートナーシップ制度を持たない県と川口市については「それぞれの考えがあるが、県が作ってくれれば協定がなくても済んだ。連携を県が主導することを(市から)打診もしたが、『主導する考えはない。市町村がやること』とのことだった。川口市が制度を作り、協定に加わりたいなら即、入っていただく」と説明した。川口市は制度導入について「検討中」としている。
自治体へのパートナーシップ制度の請願などの活動を行ってきた当事者らの団体「レインボーさいたまの会」は「自治体主導でできることを模索し、62市町村が一丸となり実行したことは、理解の深まりの表れでうれしい。県内の当事者の安心感につながる」と歓迎。協定の効果については「制度は自治体ごとに異なるので一概に言えないが、少なくとも以前よりは利用しやすくなるのは確か」と期待を示した。
パートナーシップ制度は2020年4月、さいたま市が県内で初めて導入した。同市宣誓第1号の稲垣晃平さん(32)は「創設4年で62自治体まで広がったことは、本当にありがたい。各自治体の相互連携が進めば、県内の病院などに受診した際、安心して受診できると思う」と歓迎した。
県内62市町村が連携協定を締結しても、川口市と県が制度化していないことから、効果が薄れるのではないかとの懸念を持っている。各自治体での制度内容も違っており、「川口市も県も制度を導入してほしい」。市町村の制度化の進展により、企業などの取り組みに期待している。
パートナーシップを宣誓して安心感を得たものの、法的な保証は一切ない。3月には、札幌高裁が同性婚を認めないのは憲法違反と初めての判断を示した。同性婚の法制化について、「国としても、本腰を入れて動いてほしい」と求めた。