埼玉新聞

 

助けたい…消防団に入った外国人、放水はできない現状 「公権力の行使」に当たるため、障害物の除去も不可 消防庁が活動内容を整理へ 「入団希望する人は多いはず」と話す外国人団員、今期待される役割は

  • 辞令を受けるカテリナ・チョルノフオステムコさん=1日、和光市

    辞令を受けるカテリナ・チョルノフオステムコさん=1日、和光市

  • 辞令を受けるカテリナ・チョルノフオステムコさん=1日、和光市

    辞令を受けるカテリナ・チョルノフオステムコさん=1日、和光市

  • 家族と触れ合うビノド・バッタライさん(左下)=15日、和光市

    家族と触れ合うビノド・バッタライさん(左下)=15日、和光市

  • 辞令を受けるカテリナ・チョルノフオステムコさん=1日、和光市
  • 辞令を受けるカテリナ・チョルノフオステムコさん=1日、和光市
  • 家族と触れ合うビノド・バッタライさん(左下)=15日、和光市

 和光市消防団(深井宏之団長)に今月、ウクライナ人のカテリナ・チョルノフオステムコさん(38)が入団した。引き締めた表情で辞令を受けたカテリナさんは「母国は戦争で大変だが、両親は働き、他の高齢者を助けている。私も和光市の皆さんを助けたい」と意気込む。ただ、消防団員は非常勤の公務員で、放水や障害物の除去などは「公権力の行使」に当たる活動で外国人の団員はできない。消防庁は本年度、活動内容を整理し、外国人が従事できる活動の事例などを示すとしている。

■「私も日本で頑張る」

 県消防課によると、2023年4月1日現在で県内には15人の外国人消防団員がいる。世界から研究所が集まる理化学研究所があり、国際都市の特色を持つ和光市の消防団には、新たに参加したカテリナさんを含め4人が在籍している。

 カテリナさんの夫も理化学研究所の研究者で、夫妻は7年前に来日。20年から和光市で暮らし、0歳と2歳の子どもを育てている。防災フェアで消防団を知り、「面白い。私にもできる」と思い、入団を決めたという。

 ウクライナはあまり地震はなく、日本で初めて地震を経験したのは19年に大阪の駅にいた時。「ちょっとびっくりしたが、大丈夫だった」という。現在もロシアの攻撃にさらされている出身地のハルキウ州には両親ら親族がとどまる。「心配だけど、普通の人が(状況改善に)できることはない。両親はウクライナで頑張っているので、私も日本で頑張りたい」と話した。

■活動内容明示へ

 一般的に火災現場での放水や地震により倒壊した障害物の除去、住民への指示などは「公権力の行使」に当たるとされるが、外国人の団員には外国人住民や観光客への通訳などの支援が期待されている。

 全国の自治体には「訓練では外国人団員も放水や障害物の除去を行える」と説明しているホームページもあり、消防庁は線引きについて「地域の実情に応じて運用されている」と説明する。

■大地震で教訓に

 ネパールのシャンジャー郡出身で東京外国語大学の特別研究員を務めるビノド・バッタライさん(41)は22年12月に和光市消防団に入団した。外国人でも入れるとメディアを通じて知り、「どうしても入りたい」と思ったという。

 ネパールでは15年に大地震があり、首都のカトマンズなどで約9千人の犠牲者が出た。バッタライさんは日本で募金活動を行い、母国を支援した。ネパールではレンガ造りで崩れやすい建物が多く、机などの下に隠れて揺れが収まるのを待つ日本と違い、急いで屋外に避難する必要がある。

 バッタライさんは「国によって最適な防災対策は異なる。自分の子どもたちを守るためにも知っておきたい」と語る。外国人団員の活動内容については「もう少し分かりやすく示してくれれば、入団を希望する人は多いと思う」と期待した。
 

ツイート シェア シェア