<ジモトピア>昔も今も旅人見守る…あちらこちらに古の気配 北鴻巣駅と“同世代”町中華もオススメ
今年で開業40年になる埼玉県鴻巣市のJR高崎線北鴻巣駅。区画整理事業で誕生した新しい街は、武蔵武士の源流、箕田(みだ)源氏ゆかりの地に建設された。利根川から荒川へ用水を導く武蔵水路が流れ、水辺の街でもある。かつては中山道の道が分かれる追分(おいわけ)、現在は国道17号のバイパスの分岐点として、古くから交通の要衝となっている。
駅東口に降りると、スーパーや歯科医院、居酒屋チェーン、カフェ、ドラッグストアなどの看板が視界に入る。駅前の掲示板は市民向けの講座などのチラシでいっぱい。周辺は集合住宅が林立し、少し離れると一戸建てが並ぶ閑静な住宅地が広がる。ベッドタウンらしく、日中は人通りが少ないが通勤時間帯にはたくさんの人が行き交う。
駅開業は、1984(昭和59)年11月3日。国道17号が武蔵水路と交差する箇所には、さきたま緑道の歩道橋が架かる。武蔵水路に沿った遊歩道で、北へ4・5キロ進むとさきたま古墳公園がある。
水路沿いの歩道を南下すると、水辺ならではの風が感じられ気持ちがいい。高崎線をくぐると、新しい住宅が見られるものの、歴史を感じさせる満願寺、庚申(こうしん)塔に加え、古墳がいくつかある。頂上に小さな神社がまつられている古墳もある。
南東にある箕田氷川八幡神社の境内に立つ箕田碑によると、嵯峨天皇の流れをくむ源仕(みなもとのつこう)が足立郡箕田郷に土着して箕田源氏の祖となったという。さらに、この地が武蔵武士発祥の地であるとも記されている。
この辺りは江戸五街道の一つ、中山道沿い。国道17号はあとから建設された幹線道路で、昔ながらの街道筋には地蔵尊などがあり落ち着きを感じる。
やがて箕田追分の交差点にたどり着く。1996年に当時の県大宮土木事務所が設置した説明板によると、同所は中山道から忍(現行田市)や館林へ向かう道が分かれ、江戸時代には旅人がわらじを替えたり休憩する「立場(たてば)」と呼ばれる場所が設けられていたという。
北上し、踏切を渡るとその先にはご神木の大ケヤキが見事な三ツ木神社がある。神社へ向かう途中にある「一番亭」は赤いのれんが食欲をそそる町中華。駅開業の翌年の85年に開店し長らく地域の人たちに愛されてきた。半チャーハンとギョーザ3個が付いたラーメンセットを注文したが、正統派のしょうゆラーメンで、ボリューム満点の懐かしい味がおいしかった。
2008年には駅に西口が開設。国道17号から熊谷バイパスが分岐する箕田交差点には、新大宮バイパスから続く上尾道路が延びてくる計画もある。交通の要衝は今後も、変わり続けて行くのだろう。
【メモ】一番亭=午前11時半~午後2時、午後4時半~同8時。月・火曜定休。電話048・596・6671