混乱…男女別学の埼玉県立高校“共学化”アンケートやり直し 無記名式で誰でも回答可、不正できる状態「回答ハードルを下げる目的」…批判が集まり2日で停止「ずさん」 記名式にして再び開始、賛成派と反対派は
埼玉県教育委員会が17日から県内在住、在学の中学・高校生と保護者を対象に開始した県立男女別学高校の「共学化」の是非などを問うウェブアンケートについて、19日に募集を一時停止したことが分かった。重複回答や対象者以外による回答といった不正の懸念が高まったことが原因で、県教委はこれまでの無記名式から記名式にシステムを修正したアンケートフォームを同日中に公開した。実質的なやり直しとなる。
「混乱を招いていることについて申し訳なく感じている。対象者におわびしたい」。19日の定例会見で日吉亨教育長はこう陳謝した。アンケートは昨年8月に県男女共同参画苦情処理委員が行った勧告を受けて開始したもので、回答は今年8月末までに同委員に提出を求められている報告の参考にする方針だった。
中高生に対する全県的な初めての意見聴取機会だったこともあり、当事者の関心は高く、募集を停止した19日午前11時までに8157件(中学生77件、中学生保護者509件、高校生3165件、高校生保護者4406件)の回答が集まった。
一方で、募集開始直後から、身分確認をせずに誰でも回答できるシステムに対して不信の声も挙がっていた。県教委には19日までに「正当性がなく無効」や「仕組みがずさん」といった批判が、メールや電話で20件以上寄せられた。
新しく開始したアンケートでは、中高生に本人の氏名の記入を求める。保護者は対象の子どもの氏名を記入する。そのほかの質問事項や回答要件については変更しない。アンケートの集計は、無記名式の結果と記名式の結果を分けて集計し公表する。無記名式で回答した中高生、保護者の記名式での再回答も受け付ける。
17日のアンケート開始に向けて、県教委は記名式の検討もしていた。ただ、高校受験を控える中学生の心情への配慮や回答ハードルを下げる目的で無記名での実施を決めた経緯がある。
日吉教育長は「不正の見極めは完全には難しい」と認めた上で「率直な意見を聞くことと信頼性を高めることのバランスを考え、こういう(記名式の)形にする。責任を持った回答を促すことにもなる」と述べた。
共学化を巡っては別学校有志らが昨年12月から反対の署名活動をオンラインで行い、19日までに約2万5千人の署名を集めている。一方、推進を求める市民団体が27日にさいたま市内で、2010年に県立高校の全校共学化を行った宮城県の浅野史郎元知事を講師に招いた講演会を企画するなど議論が続いている。