第三者性欠け、報告書は水準以下…さいたまの小学校いじめ重大事態、再調査へ 被害男児は現在も不登校続く
埼玉県さいたま市立小学校で2021年度に、いじめの重大事態として認定された事案について、いじめ防止対策推進法に基づく、市長による再調査を行う第三者委員会の初会合が18日夜、市役所で開かれた。委員長に選出された獨協大の市川須美子名誉教授(教育法)は終了後、報道陣の取材に応じ、学校側の設置した第三者委の調査について、「第三者性が欠け、調査を尽くすという点で少し甘かったのではないか。報告書としては水準に達していない」と指摘した。
市子ども・青少年政策課などによると、20年度に当時小学2年の男子児童が同級生からいじめを受けた。21年度に不登校になるなどして、重大事態と認定され、学校側の第三者委が調査した。調査報告書は昨年5月、清水勇人市長に提出され、被害児童と保護者は不服として、再調査を求める意見書を出していた。
会合は委員4人全員が出席し、非公開で2時間以上行われた。市側が事案の内容や再調査に至った経緯を説明。委員が調査の方針を協議した。
市川委員長は取材に「基本的には学校関係者だけで調査をした。本来的な意味での第三者性を持った第三者委の調査とは言えない。もっと踏み込まなければいけなかったのに、調査を尽くしていなかったのではないか」。学校側の報告書が水準に達していないとして、「かなりきちんとした調査が必要」とも述べた。
被害児童は6年生で現在も不登校が続いているという。市川委員長は調査の範囲が確定していないとしながら、「中学に進学する前の年度内に報告書をまとめたい」「保護者の方と信頼関係を持ち、できるだけ中立公平に進めたい」と話した。5月に委員会を2回開き、保護者から話を聴く予定。関係した児童、学校側の第三者委の関係者からも事情を聴きたいとしている。
被害児童の父親は19日、埼玉新聞の取材に「(学校側が)関係者だけで調査をして、第三者としているので、今回はそれを全部確認する再調査。(委員会に)参加した時に、私どもの気持ちを伝えていこうと思う」と話していた。
清水市長は18日、「いじめは決して許されるものではなく、子どもたちの心に寄り添いながら、市長としてしっかりと調査をしなければならないと考えている。委員の皆さまには、事案の全容解明、事態への対処や、再発防止を図るため、公平・中立な立場から審議をお願いしたい」とコメントを出した。
市川委員長の指摘に対して、竹居秀子教育長は19日、「市教委としては、国のガイドラインに基づき対応したと捉えています。今後については、国の制度に基づき行われている市長による再調査の動向を注視していきたいと思います」とコメントした。