エスカレーター「立ち止まって利用する」条例案可決 成立すれば全国初 自民「片側空ける慣例あるが」
埼玉県議会の総務県民生活委員会は8日、自民党県議団提出の立ち止まった状態でエスカレーターを利用することなどを定めた「県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例案」を賛成多数で可決した。2月定例会最終日の26日に採決、可決される見通しで、成立すれば全国初の条例となる。成立後、周知期間を経て10月1日に施行予定。
同条例案では、県や県民、関係事業者の責務などを明記。利用者は立ち止まった状態でエスカレーターに乗り、管理者は利用者に対して安全利用を周知し、県には安全利用に関する施策を実施することなどを求めている。必要に応じて、知事が管理者に対し、周知に関する指導や助言、勧告を行うことができるとしている。罰則規定はない。
日本エレベーター協会によると、2018年1月~19年12月に把握したエスカレーター事故の件数は1550件。うち963件(62・1%)が転倒によるものとなっている。
条例案の提案者を代表して中屋敷慎一氏(自民)は「エスカレーターを歩く人のために片側を空けることが慣例になっているが、歩行は非常に危険。接触や衝突で他の利用者を転倒させる恐れがある」と説明。続けて「社会に定着した人々の行動を変えるには、より強いメッセージの発信が必要だ」などと述べた。
一方、県民会議の委員は「罰則規定がないとはいえ、条例で義務化するのは、いささか県民にとって唐突ではないか。義務化の前に努力義務として県民に投げ掛けるべき」として修正案を提出。修正案では「利用者の努力義務」として、エスカレーターの利用に当たっては、立ち止まるほか、手すりにつかまり、安全に配慮した状態を保つことなどを盛り込んだが、賛成少数で否決された。
民主フォーラムの委員は原案、修正案ともに賛成。同会派の田並尚明代表は「止まって乗っている人が嫌がらせを受けたというニュースを見たことがある。安心して条例を守れるように周知が必要になるのではないか」と話した。