物流網が寸断、平時から震災への備えを 丸和運輸機関・社長、物流支援のノウハウ蓄積 #これから私は
東日本大震災では人的物的被害だけでなく、物流網の寸断で経済活動や生活も大きく損なわれた。「桃太郎便」で知られる丸和運輸機関(埼玉県吉川市)では、さまざまな災害現場への物流支援の経験をもとに、企業や自治体のBCP(事業継続計画)を物流面から支援するBCP物流に取り組んでいる。(山田浩美)
同社は1995年の阪神淡路大震災で初めて大規模災害の物流支援を経験した。東日本大震災では、即座に全国の子会社を通じて車両燃料を確保し、現在の協力会社の全国組織「アズコム丸和・支援ネットワーク」(アズコムネット)の前進組織からも車両と人手を総動員。同社が得意とする荷主企業の物流業務を包括して請け負う3PL(サードパーティ・ロジスティクス)を生かし、全国の物流拠点を連携させながら、商品供給や物資輸送などを行った。
大手ドラッグストアへの店舗には震災翌日から医薬品や生活雑貨などを通常配送し、原発事故で混乱する福島県にも自衛隊の物資などを輸送した。「物流は人々の生活を支える重要な社会インフラ。3・11でそのことを再認識した」と和佐見勝社長は話す。その後も、2016年の熊本地震、18年の北海道胆振東部地震などで支援を重ね、災害時の物流支援のノウハウを蓄積した。
災害が激甚化し、頻発する中、災害時に社会貢献的に支援するのではなく、平常時から継続的な支援が必要と考え、19年にBCP物流の事業化に着手。防災研究の専門家らと諮問委員会を設置し、大学とも共同研究を開始した。自社のBCP体制を強化しながら、災害時には企業や自治体へBCP物流の支援を行い、平常時には備蓄在庫の管理などを行う一貫した支援を提供することを計画。アズコムネットを中心に現在、18の自治体と協定を結んでいる。
和佐見社長は「有事はもちろん、平時から企業の事業活動や有事への備えを支援する持続的なBCP物流の体制を確かなものにしていきたい」と力を込めた。
=埼玉新聞WEB版=