下水汚泥を肥料に 埼玉県が全国初登録 燃料灰原料、「荒川クマムシくん1号」
埼玉県は30日、荒川水循環センター(戸田市)での下水処理過程で発生した汚泥の燃焼灰を原料とする「荒川クマムシくん1号」が、菌体りん酸肥料として登録されたと発表した。下水汚泥燃焼灰を菌体りん酸肥料として登録したのは全国初。同日の会見で大野元裕知事は「まずは実際に農地で使用していただくこと。リン肥料の代替として認めていただき、経済的にも一定程度の成果を証明した後、横展開ができれば」と話した。
2023年10月に肥料の安定供給を目的に規格が創設された菌体りん酸肥料は、これまで汚泥肥料が課題としていた含有成分のばらつきを、定期的な成分分析によって安定させることで、肥料成分の保証と肥料混合を可能とした。
「荒川クマムシくん1号」は生産事業場の「荒川水循環センター」と県の下水道マスコット「クマムシくん」を掛け合わせて命名され、リン酸全量で16・0%の成分保証が特長。他の肥料原料と混合・調整することで、化学肥料の代替として期待される。
化学肥料を巡っては「肥料の3要素」とされる窒素・リン酸・カリの原料資源のほぼ全量を輸入に依存し、対象国の情勢変化や為替変動による輸入価格高騰などのリスクを抱えていることが問題視されている。
県下水道事業課によると、県が保有する九つの下水処理場で発生する年間50万トンの下水汚泥は燃焼させることで1万トンに減少。これまで産業廃棄物として有償で処分していた下水汚泥燃焼灰が肥料登録され、実用化のめどが立てば下水処理のコスト縮減にもつながるという。
同課の水橋正典課長は「年間で200~300トンの肥料として利用できる燃焼灰が製造できる。農地に使って効果があるか、問題がないか検証していくステップが必要。試作・試験は夏をめどに着手できれば」と見通しを示した。
大野知事は「県においては早期に循環経済を成し遂げる仕組みの中に、下水道も入ることができないか知事主導で進めてきた経緯があり、他に先行して実施できたと考えている」と述べた。