女性から高い支持 人気のフライドチキン、埼玉・上尾に開業 想定上回る売り上げ、ワタミが出店を本格化へ
居酒屋大手のワタミは国内での運営権を持つ韓国の人気フライドチキンチェーン「bb.qオリーブチキンカフェ」の出店を本格化させる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自宅で過ごす人が増えたことで、韓国ドラマの視聴者が増え、作中に登場するそのフライドチキンも話題に。既存店の来店客が増え売り上げも好調なことから、来春までに70店舗程度まで増やす。新型コロナの影響で主力の居酒屋の売り上げが大きく落ち込み、焼肉業態への転換を進めるなど早期の収益改善が急務の中、韓国チキンのカフェ業態を事業のけん引役に育てる方針だ。
「bb.q」は世界25カ国、2500店以上を展開する韓国で人気のフライドチキンブランド。ワタミでは粉やタレを韓国から輸入し、鶏肉は国産を用い、オリーブオイルとソイオイルのブレンドオイルで揚げる。冷めてもサクサク感があり、特製のピリ辛な味付けが女性から高い支持を集める。
国内では運営権を取得した2016年に第1号店を都内で開業。20年までに計3店を都内に開設している。これまで積極的な展開は控えていたが「運営自体が実験的な要素が強く、フライドチキンに合うドリンクなどメニュー開発を地道に進めていた」(広報担当者)と説明する。
それでもカフェスタイルで女性でも入りやすく、テークアウト可能な点が人気に。1号店の売り上げは21年2月まで39カ月連続で前年比を上回り、人気を集めてきた。
人気をさらに高めたのが複数の人気韓国ドラマにメニューを提供し作中で出演者が食べていること。特にコロナ禍の外出自粛で在宅時間が増える中、動画配信サービスで配信の「愛の不時着」で主人公らが酒と一緒に食べるシーンが話題に。芸能人らが店舗の情報など会員制交流サイト(SNS)などの紹介や口コミで広まり、来店客が増えたという。ドラマのファンを軸に需要が取り込めるとみて、出店を本格化させる。
県内の第1号店は3月10日、上尾市内に開設した。業態初のロードサイドへの出店だが、青木瑠美店長によると開店以来、売り上げは想定を上回っているという。「ドラマを見て関心があった。県内で買えるのはありがたい」と言って買いに訪れる客が多いと説明しつつ「ドリンクなど店独自の商品も提供し、ファン拡大を図りたい」と語る。
21年3月期の連結最終損益が116億円の赤字(前期は29億円の赤字)になりそうだとしているワタミ。主力の居酒屋は新型コロナの感染拡大による時短営業などで売り上げの低迷が続く。影響長期化も想定し、居酒屋形態の3割を業態転換や、唐揚げ専門店「から揚げの天才」など新業態の展開を進めるなど、事業の見直しを急ぐ。
すでに計100店体制が視野の「から揚げの天才」は「bb.q」と同様に鶏肉料理の業態。ただ競合するとは想定せず「利用者の選択肢を増やすことで需要を掘り起こすなど、相乗効果を狙いたい」(同担当者)と話している。