マンションのような巣、毎年約160羽巣立つ 春日部に「ツバメが集まる道の駅」 利用客らと子育て見守る
春日部市上柳の道の駅庄和は「ツバメが集まる道の駅」として知られる。スタッフはツバメが繁殖しやすい環境を整え、施設の利用客とともに温かく見守る。5月は子育てが本格化する時期。ひなは懸命に餌をねだり、親はせわしなく飛び回る。無事に巣立つまで、にぎやかな共存の日々が続く。
「かわいいね」「こんなにたくさん」。巣から顔をのぞかせるひなたちに、利用客が目を細める。軒下や壁に3~5メートル間隔で並ぶ巣の下には「ツバメ生息中」と書かれた張り紙も。マンションのように配置された30以上の巣から毎年、約160羽が巣立つという。
道の駅庄和は2005年にオープン。その2、3年後からツバメが定着し、徐々に数を増やしていった。毎年3~8月に現れ、泥や枯れ草を集めて器用に巣を作る。前年の巣が無事ならば、そのまま再利用することもある。
「自然に囲まれた立地で巣の材料や餌が豊富にありながら、適度に人の出入りがあるため天敵のカラスにも狙われにくい。ツバメにとって、ここは子育てしやすい環境なのかもしれません」と業務課長の津隈研也さん(46)。
巣から落ちたひなを戻したり、店内に迷い込み出られなくなった親を逃がしたり、スタッフは親身になってツバメの子育てをサポートしている。その様子がさまざまなメディアに取り上げられ、いつしか「ツバメが集まる道の駅」と呼ばれるようになった。
ツバメは農作物を食い荒らす害虫を捕食する益鳥で、巣を作った家には幸運が訪れると言われる。一方で、人間の住環境に近い場所でフン害をもたらす害鳥として巣が撤去されることもある。
道の駅庄和では、鳥類を調査する都内のNPO法人の協力も得て、巣の下にフン害を防止するためのフン受けを設置。トイレの中など営業上、巣を作られては困る場所については予防措置も講じ、共存のための「線引き」もしている。
焼き印入りどら焼きが施設内の売店で販売されるなど、名物にもなっているツバメ。スマートフォンで熱心に巣を撮影していた市内の男性(75)は「これほどの数のツバメが見られる場所は珍しい」とにっこり。観察中にツバメの異変に気付き、「助けてあげて」とスタッフに報告してくれる利用客もいるという。
津隈さんは「ツバメは縁起の良い鳥。毎年、巣を作るのを楽しみにしているお客さんも多い。特別なことをしているという意識はなく、今後もできる範囲で温かく見守っていきたい」と話していた。
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ツバメ スズメ目ツバメ科の渡り鳥。日本には夏鳥として飛来し、民家や商店の軒下などに巣を作る。飛翔能力に優れ、アブやカ、ハエなどの昆虫を捕食。全長17センチほどで体色は黒、腹部は白っぽい。特徴的な二股の尾を持つ。都市化や住環境の変化により個体数が減少しているとされる。