埼玉新聞

 

変わり果てた団地に光 賑やかな時代思い出すカフェ 元住民がオープン 古里に憩いの場

  • 「Kuki紅茶」で子どもたちに飲み物を提供するマスターの伊藤康之さん

    「Kuki紅茶」で子どもたちに飲み物を提供するマスターの伊藤康之さん=17日午後、久喜市上内

  • 「Kuki紅茶」で子どもたちに飲み物を提供するマスターの伊藤康之さん

 久喜市上内のわし宮団地商店街に、紅茶を売りにする小さなカフェがある。「Kuki紅茶」は、団地の住民だった伊藤康之さん(47)が、過疎化と高齢化が進む古里に元気を取り戻そうと、2021年11月にオープンした。子どもから高齢者まで、幅広い年代が集まる憩いの場となっている。

 伊藤さんは草加市で生まれ、生後間もなくわし宮団地に移り、約10年間を過ごした。当時の商店街は駄菓子店や鮮魚店などが軒を連ね、近くの広場では大勢の子どもたちが遊んでいた。しかし、周辺地域で宅地開発が進んだことなどから住民は減少。地元の市立上内小学校も休校となった。

 都内で不動産業を営んでいた伊藤さんは4年前、仕事の関係で久喜市を訪れる機会があり、変わり果てた古里の姿を見て言葉を失った。「商店街はシャッターばかりで、子どもたちの声も聞こえない。寂しいの一言だった」。不動産業者として活性化に貢献できないかと考え、かつて書店だった商店街の空き店舗を借り、会社の事業所としてカフェをオープン。都内の自宅から通い、マスターとして店に立つ。

 社会福祉士の資格も持つ伊藤さんが特に力を入れているのが、住民の減少で失われつつあるコミュニティーの形成だ。放課後に立ち寄った子どもがジュースを飲み、隣の席で談笑する高齢者のグループが「お菓子食べるかい?」と話しかける。気軽に利用できる全世代型のサロンを目指している。

 紅茶のほか、軽食やデザートも提供し、来店は1日当たり延べ25人前後。中には伊藤さんと同じ元住民も。15年間、わし宮団地に住んだ経験がある市内の女性(70)は「にぎやかだった頃の商店街を思い出し、懐かしい気持ちになった。紅茶もおいしかった」とうれしそう。

 伊藤さんは「団地に住み続けている人も、離れて戻ってきた人も、古里は同じ。ワンチームで集まれる場所にしていきたい」と話している。

 Kuki紅茶の営業時間は、正午~午後6時。定休日は木曜と日曜、祝日、第1水曜。問い合わせは、同店(電話0480・53・4111)へ。

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