ゴルフの松山選手が使用、クラブシャフトは埼玉・秩父産 マスターズ・トーナメント優勝、従業員の励みにも
男子ゴルフの松山英樹選手(29)が米国のオーガスタ・ナショナルGCで行われたマスターズ・トーナメントで優勝し、日本男子初のメジャー制覇を果たした。松山選手は秩父市太田にある「グラファイトデザイン」のゴルフクラブシャフトを使用している。同社担当者は快挙に「本当にすごい。うちの製品を使ってもらって優勝してくれて、すごくうれしい」と喜びを語った。
同社は1989年創業。山田拓郎社長(46)の父親で、前職でゴルフ事業を担当していた故恵さんが立ち上げた。当時は軽量で強度も強い「カーボンファイバー」(炭素繊維)が注目されだした頃で、ゴルフクラブのシャフトに使うことを考えたという。知り合いのつてをたどり、同市に本社や工場を設立した。
2002年に立ち上げたオリジナルブランド「ツアーAD」シリーズは日本ツアー男子プロ使用率でトップを誇る。トップのプロ選手たちと契約をしているわけではないが、長年にわたるツアープロ使用率の高さが高品質の証し。しましまの模様がデザインの特徴で、「しま模様といえばツアーAD」と認識されるまでに定着した。
だが、「参入した当時はしましまが『うざい』と言われ、マジックで消されたこともあった」と明かすのは同社企画部部長の高橋雅也さん(50)。根気よくゴルフ場に通い、商品を手に取ってもらえるようアピールし、少しずつ愛用者を増やしていった。当時、アマチュアで活躍していた松山選手も愛用していた。
高橋さんは日本アマの試合で松山選手と初対面し、以来サポートしてきた。現在の松山選手は2010年モデルの「ツアーAD DI 8 TX」を使用。シャフトの重量は60グラム台が一般的だが、80グラム台に及ぶという。「普通の人では振れないシャフトで、これを扱えるパワーは本当にすごい」と舌を巻く。
4日間にわたって行われるゴルフは体力も必要で、重いシャフトを使い続けることは決して簡単なことではない。松山選手は肉体改造に励み、タフな海外のコースや選手にも負けないほどに。「ゴルフが大好きで、本当にストイック。プロゴルファーの中でも群を抜いている」と話す。
同社の従業員約130人のうち、大部分が地元出身者で、自社商品に誇りを持っている。商品は手作業に頼ることが多く、経験豊富で熟練の技術を持つ従業員が丁寧な仕事を心掛けている。今回の松山選手の優勝は従業員にとっても励みとなった。
ゴルフは一時人気が低迷していたが、新型コロナウイルスの影響で「密」にならないスポーツとして再評価されている。松山選手の影響で、ゴルフプレーヤーの増加も期待される。高橋さんは「松山選手のように、世界で活躍する選手に商品を使ってもらえるように頑張っていきたい」と話していた。