埼玉新聞

 

作品に「大宮VS浦和」も登場 作家・新津きよみさん、埼玉のご当地ミステリー書くつもり 「翔んで埼玉」からもわかる…県民は何でも受け入れる土壌ある

  • 「城や山など変わらないものもある一方、さまざまなお店がなくなり、街の風景は永遠でないと気づいた」と話す新津きよみさん

    「城や山など変わらないものもある一方、さまざまなお店がなくなり、街の風景は永遠でないと気づいた」と話す新津きよみさん

  • 「城や山など変わらないものもある一方、さまざまなお店がなくなり、街の風景は永遠でないと気づいた」と話す新津きよみさん

 白岡市在住の作家・新津きよみさん(67)による長野県のご当地ミステリーが好評だ。松本市を舞台にした「ただいまつもとの事件簿」に続き、長野市が登場する第2弾「猫に引かれて善光寺」(いずれも光文社文庫)を昨年末に出版。同県大町市で生まれ育った新津さんは、両市になじみがあり、楽しみながら執筆したという。第3弾も構想中で、「街はどんどん変わり続ける。備忘録のように、街の記憶を物語の中に残したかった」と語る。
 
 執筆のきっかけは、光文社が2019年に実施した小説にしてほしい長野の名所を公募した企画。1位に「松本城」が選ばれ、同社から書き下ろしの依頼があった。松本市内の県立松本深志高校で青春を過ごしたこともあって「ぜひ書きたい」と即答した。

 主人公は、夫の転勤で東京から松本市に転居した30代の清水真紀。夫婦そろって謎解きが趣味で、都内にいた飼い猫が市内で発見された「茶トラ失踪事件」をはじめ、猫がからんだ“事件”の犯人を追うミステリーだ。「ただいまつもと」のタイトルは、ファンを公言するサッカーJ3の松本山雅サポーターのあいさつからとった。さらに2冊とも表紙は、長野の名所をバックにした猫の写真。ローカルにこだわった小説になっている。

 特筆すべきは、移住したばかりの真紀の新鮮な驚きとともに描かれる“長野”。松本城の城下町にある蔵造りの喫茶店、善光寺仲見世の土産物店で食べるおやき、県民が愛する県歌「信濃の国」…。歴史や地理も紹介され、両都市の魅力が旅情たっぷりにつづられる。新津さんは「親しみある都市だけど、歴史や夜の景色など知らないことも多かった。サッカー仲間に教えてもらったりして勉強になった」と笑う。

 「猫に引かれて~」のテーマは「マウント」。ライバル関係にある「松本VS長野」に加え、「浦和VS大宮」も登場。主人公が「ライバルって、切磋琢磨し合って、お互いを高め合う存在でもあるでしょう?」と語るなど、「仲良くしましょう」というメッセージがちりばめられている。

 埼玉のご当地ミステリーについては「書くつもりがあります」ときっぱり。「東京に近くて便利なのに、都会と田舎のどちらの顔も持っている。『翔んで埼玉』の人気から分かるように、自虐を楽しむ心の余裕を持っているのが埼玉県民。寛容な人が多く、なんでも受け入れる土壌がある」と魅力を語った。

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