埼玉新聞

 

行方不明の女性、橋の上に…走る女性、勇気出して保護「声掛けないで後悔するより、声掛けて後悔したい」

  • 小川英規署長(右)から感謝状を受け取った宇田川知佳さん=28日午前、川越署

  • 埼玉総体陸上女子800メートル決勝で4位に入った当時埼玉栄高3年の宇田川知佳さん=2008年8月1日、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場

 行方不明者を発見、保護したとして、川越署は28日、川越市の会社員宇田川知佳さん(30)に感謝状を贈った。

 宇田川さんは11日昼前、休日の日課にしているランニング中に市内の橋の上でたたずみ、橋の下を眺める市内居住の30代女性を発見。肌寒い中、薄着で持ち物を持っていなかったことから、「様子がおかしいな」と思いながらもこのときはランニングを続けた。

 午後0時25分ごろ、同じ橋の上を走って通過しようとしたところ、同じ場所で再び女性を発見。「大丈夫ですか」と声を掛け、ランニング中に防災無線で聞いた行方不明者と女性の特徴が酷似していたため、その後110番した。

 川越署が行方不明届を受理してから約2時間で女性が発見、保護された陰で、宇田川さんの機転が光った。

 川越市出身の宇田川さんは元陸上選手。埼玉栄中、埼玉栄高、立教大で10年間競技に打ち込み、埼玉栄高の3年生だった2008年の埼玉総体(インターハイ)では女子800メートルで4位入賞するなど全国の舞台で活躍した。女性が同じぐらいの世代だったことで「声を掛けようかすごく迷った」というが、「ここで声を掛けないで後悔するより、声を掛けて後悔した方がいいと思った」と力を込める。警察官が駆け付ける間も「年齢が近いですね」などと世間話をして女性の心に寄り添った。

 宇田川さんは「ご無事で何よりでした。ご家族も心配していたでしょうし、本当に良かった。安心してます」と胸をなで下ろした。感謝状を手渡した同署の小川英規署長は「まさにスポーツで培った的確な判断だったと思います。(女性を)発見していただいたことは素晴らしいし、ありがたい」と笑顔でたたえていた。

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