<新型コロナ>ごめんなさい、自分は悪くないのに…埼玉まん延防止、飲食店悲痛 客が酒要望、泣く泣く断る
まん延防止等重点措置が28日から県内15市町に拡大された。時短営業や酒類提供の終日自粛が求められる適用区域の居酒屋などでは、客からの酒の要望を泣く泣く断り、開店休業状態に悲痛な声が上がった。適用期限の5月11日まで休業する店もあり、コロナ禍の暗雲はまた濃さを増した。
酒類提供自粛の要請を受けて、さいたま市浦和区の居酒屋「日本酒ダイニング 栄三郎」は、適用期間の5月11日まで休業することを決めた。店主の田中昇さん(62)は「自分自身の仕事を自問自答して、日本酒を提供する居酒屋の存在意義がなくなると思った。政治家は『ここが正念場』と言うけれど、飲食店はずっと正念場が続いている。正念場でやることがアルコールの禁止。笑ってしまうくらい、悲しい」と苦境を訴えた。
同店は2018年5月11日の開業で、4月29日~5月11日にかけて「3周年感謝祭」を予定していた。利益を度外視して1日に数組限定の予約を受け付けていたが、1件1件に電話して休業を知らせている。「喪失感、むなしさは今までと違っていた。自分は何も悪くないのに、『ごめんなさい』と謝っている。悔しい」
感謝祭は5月15、16、22、23日に延期した。措置期間が延長されたら「そのとき、考えたい。ワクチン接種が進むまで、辛抱するしかない」と話していた。
大宮区の南銀座通りにある「もつ焼 大阪屋」の赤坂架月代表(28)は「うちの売りはもつと串焼きなので、まずお酒がなければ客が来ない。お酒の利益率が一番いいので、売り上げにもつながらない。8時までの時短営業では夜に売るものがない」と悩む。
赤坂代表によると、酒類の提供自粛を始めた28日、開店した午前11時半ごろから午後5時ごろまでに訪れた客は6人で、まさに「開店休業状態」。その間に客から「飲めますか」と聞かれ、泣く泣く「飲めません」と断った数は14組に上るという。「皆さん、飲める店を探している感じだった。”お酒難民”みたいな人が多いのでは」と推測する。
世間では協力金がもらえる飲食業への批判もあるが、赤坂代表は客とたわいのない話をしながら、ほっと一息つける場所として、できる限り営業を続けたいと考えているという。「一杯も飲めない、マスクなしで会話もできないのでは、店以上にお客さんのストレスもたまるのではないか」。店にとっても、客にとっても苦しい胸の内を明かした。
桜区にある飲食店の30代の女性店長は「時短営業のため集客は思うようにできず、特に夜は難しい」と話す。「夜はお酒好きな人に来てほしかったが、時短営業でラストオーダーが夜7時ぐらいになってしまうため、会社帰りの人が寄れない」と嘆く。
店はコロナ禍の昨年夏ごろにオープン。売り上げの約40%をアルコールの販売が占めていた。「会社勤めの人も会社から『仕事帰りに飲食店には寄らないで』と言われている人もいるらしく、なかなかお店に寄ってくれない」と厳しい現状を語る。
政府や自治体からの飲食店への要請については「正直、(店を)つぶさせる気なのかと思う。もう少しやり方があるのでは」と不満をあらわにする。それでも、「いつも来ているお客さんが応援してくれているので、何とか営業を続けられている状況」と話した。