埼玉新聞

 

白馬が参拝者をお迎え 足を故障、引退の乗用馬がデビュー 埼玉・東松山の上岡観音、第二の活躍の場に

  • 祈願を受ける小雪と関係者=東松山市岡の上岡観音

 馬の守り本尊として信仰を集める東松山市岡の上岡観音(妙安寺)の「馬の日」(毎月19日)に白馬の道産子が訪れて、参拝者をお迎えすることになった。足の故障で乗用馬の引退を余儀なくされたが、馬の愛好者仲間がオーナーとなり、第二の活躍の場を作った。

 道産子は日本在来馬で北海道和種月毛の馬「小雪」(11歳)。2019年から同市大谷の武蔵逍遥乗馬会のトレッキング馬として活躍してきたが昨年、足を故障し、「乗用馬としては引退を考えざるを得なくなった」という。

 このため「小雪が生きていく道として馬主が就き支えてもらえれば」と知人に声を掛けたところ、13人が馬主になってくれ、現在は預託馬として生活している。その一人が今回、代表を引き受けた地元の根岸成直さん(80)。

 根岸さんは上岡観音の「絵馬市保存会」の会長。以前は上岡観音の敷地内に馬がいて「地域の人たちは馬を身近に感じていた」という。この話から「小雪を上岡観音の馬として活躍できないか」との声が出た。その後、根岸さんが妙安寺の斎藤春祐住職に相談、小雪のデビューが実現した。4月19日、「小雪組」を立ち上げ、祈願を行った。

 今後、小雪は毎月19日の午前中、武蔵逍遥乗馬会のスタッフや馬主と4、5キロ歩いて上岡観音を訪れ、敷地内の“ミニ牧場”で過ごす、という。

 根岸さんは「以前はサラブレッドやポニーがいた。かつてのにぎわいが戻るよう、シンボルとして活躍してもらえれば」と期待を込めた。

 同乗馬会の相川悟代表(58)は「小雪を通して、馬頭観音のにぎわいが復活、日本在来の和種馬の保存、ホースセラピーなど、人と馬が関わる機会が広がれば」と話している。

 【メモ】妙案寺は鎌倉時代の文治年間に瑞慶和尚によって創建されたとされる。元々は馬の守り神ではなく、馬頭観音像が頭上に馬の頭をいただいていることなどから、江戸時代に「馬の観音様」として広まり、信仰されてきた。毎年2月19日の例大祭には、関東一円の畜産や運送業者、牧場や競馬関係者が参拝に訪れる。かつては絵馬を売る店が100店ほど出たが、今は「絵馬市保存会」だけ。

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