埼玉新聞

 

<新型コロナ>ダイヤモンド・プリンセス号の患者搬送も 観光需要の落ち込むバス会社、救急医療を支援

  • 患者搬送時は防護服を着用。感染予防に努めながら業務に当たっている=群馬県大泉町のスター交通(提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光需要が落ち込む中、羽生市に事業所があるバス会社「スター交通」(群馬県大泉町、碓氷浩敬社長)は、コロナ感染者の搬送業務に力を入れている。以前から緊急性の低い傷病者を「民間救急」として搬送してきたノウハウを生かし、コロナ禍で対応に苦慮する救急医療を民間の力で支援。月間700人前後を搬送しており、碓氷社長は「助かる命を一人でも多く救っていきたい」と力を込める。

 「大変な思いをしているに違いない」。3月下旬、仙台市で1日当たりのコロナ感染者が100人以上になったことが報道されると、碓氷社長はすぐさま仙台市に向かった。市役所や宮城県庁で救急体制の現状などを聞き取り調査。患者搬送の請負契約を市と締結し、3日後には搬送スタッフと看護師の2人を現地へ派遣した。「突発的な事象にも対応して、責務を果たしい」と碓氷社長は語る。

 同社は2011年に設立。観光バス事業をメインに展開し、緊急性が低い患者の搬送を行う民間救急もほぼ同時に始めた。医療関係者と親交があった碓氷社長が「医療に近い立場で何かできないか」と考えたのがきっかけだった。患者の搬送はコロナの感染拡大以前から一定のニーズがあり、「自力移動に困窮する人の一助にもなりたい」と行動に移した。

 昨年2月にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」でクラスター(感染者集団)が発生した際も、患者の搬送を担当している。その後、本社や事業所のある群馬県、埼玉県、東京都の首都圏にとどまらず、各地でコロナ感染者の搬送などを担うようになった。民間救急の際に採用していた自社の看護師が搬送に同行するのが強みの一つで、「患者の不安軽減にもつながる」。

 コロナ関連の搬送者は1カ月当たり600人~750人に上る。深夜や休日の出動も珍しくない。「医療搬送は社会から必要とされている」と碓氷社長は肌で感じている。搬送車両は救急車4台、車いす対応の福祉車両3台を準備。将来的には主力事業への発展も目指しており、体制拡充のため車両の増台も検討しているという。

 コロナは収束の気配が見えず、同社には各地の自治体から問い合わせが相次ぐ。碓氷社長は「可能な範囲で対応して、助かる命を一人でも多く救っていきたい」と力を込めた。

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