泣く姉…弟死亡「まだどこかにいるのでは」 スピード自慢2人事故死 納得できぬ母「懲役3年以下は短い」
鴻巣市で2019年12月に高校生4人が死傷した事故で、高速度で車を走行させ運転操作を誤ったとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた、当時18歳の少年(19)の判決公判が6日、さいたま地裁で開かれた。田尻克巳裁判長は「単なる不注意ではなく無謀運転の結果であり、過失は悪質かつ重大」として、少年に懲役2年以上3年以下(求刑・懲役4年以上6年以下)を言い渡した。
判決理由で田尻裁判長は、少年が高速度で運転できることを同乗者に誇示したいと考え、一度減速して車間距離を取った上で、「意図的に車を加速させた」と指摘。同乗者に「やめろ」「危ねー。事故るだろ」と注意されたにもかかわらず、「制限速度の約3倍で進行した結果、運転操作を誤って事故を起こした」と述べた。
判決によると、少年は19年12月13日午後0時20分ごろ、鴻巣市郷地の県道で、制限速度を78キロ超える約118キロで車を走行。運転を誤って道路左側のガードレールと油圧ショベルに衝突させ、後部座席に乗っていた本庄市の男子高生と深谷市の男子高生=いずれも当時(18)、高校3年=を死なせるなどした。
■遺族「法と現実、隔たり」
公判では、事故で死亡した本庄市の男子高生と深谷市の男子高生の遺族が毎回、喪服姿で傍聴した。
本庄市の男子高生の姉(25)は判決を受け、「執行猶予が付くと無罪と変わらないので、(実刑になって)悔しいとも言い切れない」と複雑な表情。「私たちは(懲役の)2年では治せない心の傷がある。彼が2年で更生できるのか不安」と語った。
弟である男子高生とは6歳違いの2人姉弟。子どもの頃、両親に「赤ちゃんが欲しい」とねだって授かった待望の弟だったという。男子高生は高校で野球部に所属しており、「同じような子を見ると、いないのが分かっていても、あれは弟かなと思ってしまう。どこかでまだ遊んでいるんじゃないかって」と涙。被告の少年には「2人の命を背負って、犯した罪を忘れず死ぬまで一生償ってほしい」と話した。
深谷市の男子高生の母(44)は、「執行猶予の可能性もあったので実刑でほっとした」としながら、「遺族としては3年は短い」と率直に述べた。
県警は当初、法定刑が最大で懲役20年になる自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)容疑で書類送検。さいたま地検は最大7年の同法違反(過失致死傷)罪で起訴した。
母は「危険運転にならないのが納得できない」と抱えていた思いを打ち明ける。地検からは説明を受けたが、「法定速度を78キロ超えて走ったこと自体が危険。交通犯罪の刑罰が軽すぎるのではないか。法律が一般の感覚や現実と懸け離れている」と指摘する。
今後に向けては、「同じような被害者が出ないために、他に被害を受けた人と一緒になって法律を変えていく活動ができれば。それが息子のためにしてあげられる唯一のこと」と願った。