埼玉新聞

 

人気のフェアも中止 越生特産の梅、記録的不作「というか凶作」 例年の3割以下…記憶にない出荷量、原因は

  • 収穫前にもかかわらず、実がほとんど付いていない梅の木

    収穫前にもかかわらず、実がほとんど付いていない梅の木=5月23日、越生町内

  • 町役場に掲示された梅フェアのポスターには、中止のお知らせが張られていた

    町役場に掲示された梅フェアのポスターには、中止のお知らせが張られていた=5月22日、越生町越生

  • 収穫前にもかかわらず、実がほとんど付いていない梅の木
  • 町役場に掲示された梅フェアのポスターには、中止のお知らせが張られていた

 越生町特産の梅が、記録的不作となっている。大梅は毎年、5月下旬から6月上旬にかけてが収穫の最盛期だが、JAいるま野への出荷量は昨年比1割台に低迷。今季は最終的に例年の3割を下回る見通しだ。JAいるま野越生支店梅部会などは、町内で今月9日に予定した梅フェアの中止を決定。凶作の原因は分からないものの、気候変動の影響を指摘する声もある。

■梅フェア開催断念

 5月23日、町内の集荷場に梅部会のメンバーが集まり、出荷する実の基準を確認する目ぞろえ会で、横田邦夫部会長(75)は切り出した。「今年は不作というか凶作。我慢の年になりそうなので、皆さんと助け合っていきたい」。既に収穫が終わった小梅は通常1~2トンの出荷量が約700キロにとどまり、町固有ブランド品種「べに梅」や「白加賀」など主力の大梅は平年が10トンのところ計画は3トン程度。新鮮な梅が買えることで人気の梅フェアは、十分な量が確保できないとして、3日前に開催を断念していた。

 26日に大梅の出荷が始まると、大幅に低く見積もった計画すら、達成は早くも厳しい状況となっている。これまでに設定した集荷日4日間の出荷量は計353・5キロ。昨年は同時期に計2136キロが集まっており、わずか17%ほどにとどまっている。同支店の担当者は「これほど少なかったことは記憶にない。今年は6月16日が最後の集荷だが、その前に終わってしまう可能性もある」と危ぶむ。

■ミツバチ飛ばず

 前部会長の吉原保雄さん(71)は原因を、(1)昨年秋の少雨で木に栄養が蓄えられなかった(2)2月の寒暖差が大きく不完全な花になった(3)その後に訪れた高温―が複合的に絡み合った結果だと推測している。「体力がなかったので、ただでさえ少ない実も木が耐えられずに落としてしまったのでは」と言う。

 今シーズンは暖冬で梅の花が1週間ほど早く開いた一方、開花後に雪が降り受粉にも影響した。梅は同じ品種の花粉では受粉しても実がならない場合が多く、ミツバチを利用した受粉が広く行われている。ところが、開花後に寒の戻りが長引くと、ミツバチが飛ばなくなってしまう。近年は温暖化の影響で、開花期とミツバチが活動するタイミングを合わせるのが難しくなっている。

 実りが悪いと不調和に長く伸びた徒長枝(とちょうし)が増え、病害虫も発生しやすい。梅部会のある会員農家は「越生は将来、梅を栽培しづらい気候になってしまうかも。ほかの作物に替えることも考えなければいけないのではないか」と不安を抱く。

 今年の梅は越生町産に限らず、和歌山県をはじめ全国的に不作だという。県川越農林振興センターは、梅部会の農家にアンケートを実施。「不作の原因を明らかにし、今後の管理に生かしたい」との方針を示した。

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