突然娘を亡くした母親…娘の死後1週間、行政の求めに驚き 「医療的ケア児」の保護者や行政関係者らが意見交換会 睡眠時間削り、転職も余儀なく「心も体も余裕ない」 苦しい日常、涙ながらに語る
人工呼吸器やたんの吸引など、日常的に医療面での介助が必要な「医療的ケア児」の保護者や行政関係者が5日、上尾市内で意見交換会を開いた。睡眠時間を削りながらの子育て、休息するためのレスパイトが利用できないなど「心も体も余裕がない」と悲痛な声が上がった。
医療的ケア児の保護者が中心となり開催した。当事者や行政担当者、医療的ケア児を支援する事業者約30人が参加。意見交換会の呼びかけ人の一人で上尾市の西山綾子さんは、長男が入院したときにきょうだいを預ける場所がなく行き詰まった経験を振り返った。「相談できるところがない。本当にどうしようかと困った。経験しないと分からない」と実態を語った。
夫婦で参加した保護者は、苦しい日常の経験を語った。妻は「生活の全ては娘のため。吸引や(水分などの)注入、おむつ交換、消毒や物品の注文、医療的ケア以外にもすることがたくさんある。子どもが生まれ幸せだが、娘が生まれて8年、心も体も余裕がない」と日々の苦労を涙ながらに語った。
大手製造メーカーに勤めていた夫も転職を余儀なくされた。日中働きながら、朝晩は妻と共に娘のケアに奔走する毎日。不条理な理由でレスパイトを断られたり、自身も適応障害の診断を受けた経験に触れた。「親のメンタルは厳しい。海外駐在を諦め、キャリアアップの道も閉ざされた。自分のための休みはない。行政や国にはもっと実態を把握してほしい」と嘆いた。
重い障害を持ち、子どもとの別れを経験せざるを得ない保護者も。昨年夏、突然7歳の娘を亡くした母親は自治体の理解のなさに驚いた。娘の介護を理由にきょうだいが保育園に通園していた。娘の死後、1週間後に行政から勤務証明書を出すよう求められたという。「求職者と同じ扱い。子どもを亡くしてすぐ働けというつもりか。子どもが亡くなってからの支援がほしい」と訴えた。
県央部の男性は、命の危険と直面する子とその家族が置かれている現状を代弁した。「医療的ケア児は人生が駆け足。時間軸が違う。子どもと親を支える支援の体制を早くつくってほしい」と訴えた。
2021年、医療的ケア児支援法が成立。県内では「医療的ケア児等支援センター(地域センター)」の整備が続く。一方意見交換会では、法制度に基づく支援が現場に届かず、自治体や医療機関で対応に温度差が大きいなどの声が上がった。
西山さんらは今後も意見交換会を定期的に開催するとし「少しずつ制度や周りの理解も変わっているがまだまだ。横のつながりをつくりたい」と話した。