埼玉新聞

 

自閉症の児童、絵画の才能でチャリティ展 埼玉・ふじみ野のパン専門店や客が協力、休止の子ども食堂に寄付

  • 「パンとアートのチャリティ・コラボ展」を開催している「ベッカライ・テルタケ」の経営者鳥飼照剛さん(右)と荻原純子さん、秀明くん=ふじみ野市ふじみ野4丁目(荻原純子さん提供)

  • 「パンとアートのチャリティ・コラボ展」で展示されている荻原秀明君の作品「パンの国の魔法使い」

 3歳時に自閉症スペクトラムの診断を受けながら、クレヨンなどで描いた作品が全国コンクールで入賞するなど絵画の才能を発揮しているふじみ野市の小学1年生荻原秀明君(6)の作品を店舗に展示し、来店客が商品を購入すると、価格の2割程度の金額を子ども食堂に寄付する「パンとアートのチャリティ・コラボ展」が同市ふじみ野4丁目のドイツパン専門店「ベッカライ・テルタケ」で開かれている。30日まで。

 「子ども食堂のお友達に僕も何かしてあげたい」―。秀明君の言葉を聞いた母親で画家の純子さん(36)が企画し、同店に協力を依頼した。4月末から始まった同展は常連客がパンを購入するだけでなく、絵を見た客が寄付を申し出るなど地域に広がっている。

 展示されているのは、秀明君が展示会用にパンをモチーフにクレヨンで描いた作品「パンの国の魔法使い」(A2判)。店舗出入り口ドアを開けた左側の壁に掛けられ、作品の下には展示会の趣旨や「きてくれてありがとう」などと秀明君自筆のメッセージが置かれている。

 期間中、カントリークッキー(税込み360円)とロジーネンブロート(同860円)、ブレッツェルちび(同180円)、モーンシュトレンちび(同650円)の4品をチャリティー商品として販売している。

 純子さんによると、秀明君は幼稚園児の時から市内の子ども食堂に通っていたが、昨年秋ごろから、新型コロナウイルス感染予防のため休止するようになった。今年1月、子ども食堂の友達に会えなくなった秀明君がぽつんと言った。「友達に何かしてあげたい」

 知人が同店のスタッフとして働いていたことや純子さんが同店の常連客だったことから3月、同店を経営する鳥飼照剛さん(49)にチャリティ展のコラボ企画を相談したところ、快諾してくれたという。

 鳥飼さんは「企画を提示されるまで、子ども食堂の意味すら知らなかったが、始めてみると、常連客が自ら寄付を申し出てくれたことがとてもうれしく、地域の人たちが応援してくれていることを肌で感じるんです」と地域の力に感激している。

 自閉症スペクトラムは臨機応変な対外関係が苦手で自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いことを特徴とする発達障害の一種。秀明君は診断後に絵を描き始め、全国の絵画コンクールで入賞したり、昨年5月は市内で初の個展を開催している。

 純子さんは「6歳の子どもが言いだしたことに、お店をはじめスタッフやお客さんがインスタグラムで応援してくれるなど多くの人たちが協力してくれたことがとてもうれしく、感謝したい。今後もチャリティーに力を注いで行きたい」と話している。

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