絶対無理…父死亡、就職で絶望した息子に刺される 「もう一緒に住めない」と母が出て行った直後に 法廷で語られた父の思い「子煩悩で息子の将来を案じていた」 重い処罰感情を抱く母 息子「父母に見捨てられた」
さいたま市南区の住宅で昨年6月、同居する父親(60)を刃物で刺し殺害したとして、殺人罪に問われた無職の男(29)の裁判員裁判の論告求刑公判が13日、さいたま地裁(室橋雅仁裁判長)で開かれた。検察側は懲役15年を求刑し、弁護側は懲役8年を求めた。判決は18日。
論告で検察側は「危険で執拗(しつよう)、悪質な犯行で、強固な殺意があった」と指摘。「被害者は子煩悩で被告の将来を案じていて、全く落ち度はなかった。遺族である被告の母親の処罰感情も重い」とし、男の軽度の知的障害については「一定程度、影響した側面があったとしても限定的で、刑の重さを大きく左右する事情ではない」とした。
弁護側は弁論で「父親に『一般枠(での就労)なんて絶対に無理』と言われ、男は『父にも母にも見捨てられた』と絶望した」と説明。知的障害が全般的に影響したとして「障害がない人と同じように責任を問うのは公平ではない」とした。
起訴状などによると、男は昨年6月10日、さいたま市南区のマンションで同居する父親の胸などを包丁で複数回刺して殺害したとされる。
■(以下、初公判記事)
昨年6月、埼玉県さいたま市南区の住宅で同居する父親=当時(60)=を包丁で殺害したとして、殺人罪に問われた無職の男(29)の裁判員裁判の初公判が6月11日、さいたま地裁(室橋雅仁裁判長)で開かれた。男は「間違いないです」と起訴内容を認めた。
冒頭陳述で検察側は、男に軽度の知的障害があり、就労を巡って両親に反発していたと説明。事件当日、男との口論により母親が「もう一緒に住めない」と出て行き、父親が障害者枠での就労を勧めたことに怒って、犯行に及んだと指摘した。
証拠調べでは、検察官が母親の調書を読み上げ、「約1年前も父親を『やって(殺して)やろうと思った』と言うので、包丁2本を隠した。1本残した包丁で事件が起きてしまった」と振り返り、「夫は子煩悩で、息子をないがしろにしたり、厳しすぎると思ったことはない。最愛の夫が大切な息子に殺され、悲しみと後悔、憎しみがある」などと述べた。
弁護側は男が障害により幼少期から生きづらさを感じてきたことが事件に関係していると主張した。
起訴状などによると、男は昨年6月10日、さいたま市南区のマンションで、同居する父親の胸などを包丁で複数回刺して殺害したとされる。
■(以下、初報記事)
自宅で同居の父親を刃物で刺し殺害しようとしたとして、埼玉県警浦和署は2023年6月12日までに、殺人未遂の疑いで、さいたま市南区鹿手袋3丁目、無職の男(28)を逮捕、さいたま地検に送検した。父親は搬送先の病院で死亡した。同署は今後、容疑を殺人に切り替え、動機や経緯などを詳しく捜査する方針。
逮捕、送検容疑は10日午後4時過ぎ、自宅マンションの室内で父親(60)を刃物で刺すなどして殺害しようとした疑い。父親には腹部などに複数の刺切創があり、病院に救急搬送されたが同日午後5時15分ごろ、死亡が確認された。
同署によると、男は両親と3人暮らし。母親は事件当時外出していた。午後4時20分ごろ、男が署管内の交番に出頭し、「父親を殺した」と申し出た。現場に駆け付けた同署員らが居室内に血痕と血が付いた包丁を発見。男に現場の状況を確認させ逮捕した。
男は同日昼ごろに同署管内の交番を訪れ「死にたい」などと相談していた。危害言動などはなく、午後2時半ごろに父親が迎えに来ていた。
男は「殺すつもりで刺した」などと容疑を認めているという。