埼玉新聞

 

残念…30年の歴史に幕、埼玉・川越「小江戸横丁」6月で閉鎖 以前は客が行列 新施設開業で解体へ

  • 一番街に面して建つ「小江戸横丁」=川越市元町

  • 通路の両側に複数の店舗が営業し、懐かしい雰囲気を醸し出す小江戸横丁

 蔵造りの建物が立ち並ぶ川越の一番街で、店がひしめき合うように営業してきた「小江戸横丁」が6月末で閉鎖される。新しい施設の開業に向け、解体されるためだ。観光客を楽しませてきたノスタルジーあふれる一画が惜しまれつつ姿を消す。

 小江戸横丁は1992年7月に設立。水産物卸問屋の本社跡地に開業した。一番街の通りに面し約20メートルの奥行きがあり途中、通路両側にグルメやアクセサリー、雑貨など10店舗ほどが営業していた。観光名所の「菓子屋横丁」「時の鐘」からも近く、たくさんの観光客が訪れていた。

 店舗は賃借契約を結び営業してきた。1区画3坪ほどのこぢんまりとした店が肩寄せ合うように商売する光景は、昭和にタイムスリップしたような面影を残した。「旅人が茶店で一休みするように」と無料休憩所も設けられ、観光客の憩いの場として利用されていた。

 一方で建物の老朽化などを考慮し、所有者側は施設の在り方を検討していた。コロナ禍で客足が減った昨年、各店舗に取り壊す方針を伝えたという。閉鎖を受け、今年1月以降、撤去する店舗が見られていた。

 小江戸横丁の開業当初から、入ってすぐの場所で名物・焼きいもおにぎり「芋太郎」を販売してきた店主、赤池正通さん(81)は「30年近く営業してきて、取り壊すと聞いた時は心が砕けた」と肩を落とす。

 「川越の特産であるサツマイモを生かしたグルメを」と考案した芋太郎が観光客に喜ばれ、海外のテレビ局から取材を受けたこともあったという。6月いっぱい販売を続けるという赤池さんは「コロナ以前は大型連休ともなれば、買い求めるお客さんが通りまで行列を作るぐらい繁盛した」と懐かしんだ。

 小江戸横丁でガラスアクセサリーなどを販売してきたフランス人店主は「ここで18年間やってきた。閉店するのは寂しい」とこぼした。鴻巣市から訪れた観光客の男性は「観光地にこんな雰囲気の場所はそうはない。残念」と話していた。

 小江戸横丁は7月から解体工事が始まり、来年の川越市制施行100周年に合わせて新施設へと生まれ変わる。1階に4店舗、2階に1店舗が入居し、来年2~3月ごろ完成予定。入居店舗は未定だ。来春の大型連休前の開業を目指している。

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