埼玉新聞

 

6年以上、要保護者の財産を剥奪 埼玉・和光市元幹部に10年求刑 部下にデータ消去迫り「「狡猾」/さいたま地裁

  • さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 和光市が生活保護受給者らから預かっていた金銭をだまし取ったなどとして、詐欺と業務上横領、窃盗の罪に問われた、元市企画部審議監の被告(57)の論告求刑公判が4日、さいたま地裁(中桐圭一裁判長)で開かれた。検察側は懲役10年を求刑。弁護側は寛大な判決を求めて結審した。判決は8月6日。

 論告で検察側は、被告が社会福祉行政を統括する立場にもかかわらず、6年以上も複数の要保護者の財産を剥奪した常習性を指摘。被害総額は約8千万円に上り、「本来あるべき職務とは真逆の行動で、市や行政に対する信頼を失墜させた結果は極めて重大」と断じた。犯行の発覚を免れるため、部下にデータ消去を迫ったり、市長に内容虚偽の書類を提出しており、「狡猾かつ巧妙。保身のため第三者を巻き込んだ」と述べた。

 弁護側は、生活保護受給者から計748万10円をだまし取ったとされる起訴内容について、「部下から受領権限があり、適性に管理しようという意思はあった。詐欺罪は成立しない」と業務上横領罪の成立が相当だと説明。「長年培った専門知識で、社会貢献してきたことは考慮されるべき」と主張した。

 起訴状などによると、被告は市保健福祉部長兼福祉事務所長だった2012~18年の間、市が生活保護受給者から預かった現金をだまし取ったほか、認知症の夫婦から預かったキャッシュカードを使って、口座から多額の現金を引き出したとされる。

 被告は詐欺や業務上横領、窃盗容疑で5回逮捕され、6件で起訴された。

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