埼玉新聞

 

なんと最大1億円を支給、募集開始へ 出産できる医療機関が10年以上ない桶川市、“産婦人科”開業を支援 妊婦検診もできず…上尾、北本などに頼る 埼玉で分娩できる病院・診療所がない自治体は27市町村

  • 【地図】桶川市(背景白)

    桶川市、産婦人科開業を補助 建築や機器に1億円

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 産婦人科医療機関の誘致を検討してきた桶川市は、新たな策として、市内で開業する産科医や医療法人などに必要な経費の一部を補助する方針を固め、募集を開始する。同市には市内で出産できる医療機関がなく、近隣の自治体に頼らざるを得ない状況が続いている。

 補助金は施設整備などの経費の総額の2分の1で上限は1億円。対象となる経費は、医療機関を開設するための土地、建物の取得費(増築、改築含む)、土木工事費、医療機器や備品の購入費など。

 募集期間は7月1日から9月30日まで。申請の条件は、(1)市内に分娩(ぶんべん)できる入院施設(19床以下)を開設する(2)10年以上継続する(3)産婦人科または産科の臨床経験を5年以上持つ医師を置く(4)補助金交付決定後2年以内に開業する―など。市は募集期間終了後に、書類審査、ヒアリング審査を行い、一つの業者に決定する。

 市健康増進課によると、市内で出産できる医療機関がなくなったのは少なくとも10年以上前。2018年には妊婦検診ができる医院もなくなった。上尾、北本など近隣市に頼らざるを得ない状況で、市民からは産婦人科の誘致が切望されていた。

 市は数年前から危機感を募らせ、医師会との調整も続けてきたが、開業する医療機関は見つかっていない。今回の補助金交付はこうした紆余(うよ)曲折の中で新たな取り組みとして打ち出された。業者決定後、予算計上するという。

 1期目の17年の市長選から公約で産婦人科の誘致を掲げてきた小野克典市長は「今回の募集でぜひ誘致が実現し、桶川で安心して子どもを産むことができればと思う」とコメントした。

■県内27市町村で施設なし

 県医療整備課によると、県内で分娩(ぶんべん)できる病院・診療所は今年4月1日時点で34病院、46診療所。各保健所の調査に基づく分娩できる病院・診療所がない自治体は志木市、桶川市、久喜市、八潮市、鶴ケ島市、ふじみ野市の6市と、毛呂山町、小川町を除く21町村。

 施設誘致に対する補助金制度を設けている他の自治体では、久喜市で6千万円、鶴ケ島市で5千万円、市有地の無償提供を打ち出している八潮市では3千万円を上限に補助金制度を設けている。

 県では本年度予算から新たに約2600万円を計上し、生活に困難を抱える妊産婦が安心して出産・生活できる環境整備や、産科医療機関にコーディネーターを配置し、妊産婦に対する養育支援を実施する。

 経済的理由により入院助産を受けることができない妊産婦が入所する助産施設は県内に18施設(休止中の5施設を含む)。県が3月に策定した第8次地域保健医療計画には産婦人科医療機関に関する指標は設けていない。
 

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