マスクで呼吸困難にも…山岳救助隊など、密にならない登山を呼び掛け 埼玉・秩父で山開き、安全を祈願
奥秩父山開き式が6日行われ、秩父の本格的な山登りシーズンが訪れた。新型コロナウイルス禍の自粛疲れによる影響からか、昨年後半から登山者が増えるとともに、遭難者も相次いでいる。山岳連盟や県警山岳救助隊は、密にならない登山や登山届を出すよう呼び掛けている
山開き式は、秩父市の霧藻ケ峰の秩父宮両殿下レリーフ前で行われた。霧(きり)藻(も)ケ(が)峰(みね)は三峯神社から雲取山に向かう登山コースの途中に位置し、標高は1523メートル。三峯神社からは徒歩で約2時間。式は毎年、県内外から100人近くの登山愛好者らが集まり、全員で登山道から奥秩父の峰に向かって切麻(きりぬさ)をまくなど、盛大に開催されている。
式は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、昨年に続いて今年も秩父山岳連盟の役員のみで実施された。同連盟の清水武司会長(71)は「コロナ疲れを解消したいと、登山を楽しみにしている方たちのためにも、関係者のみで1年間の安全祈願を行っている」と説明する。
昨年に比べ、今年は登山者が増えていると感じている清水会長。「山だから感染しないと思わずに、密にならない登山を心掛けてほしい。呼吸困難に陥ることもあるので、登山中はなるべくマスクを外す代わりに、人との距離を取ってほしい」と呼び掛けている。
県警山岳救助隊によると、県内の今年1~5月の山岳遭難事故者数は暫定値で32人だった。昨年同期の遭難者は17人、2019年同期は23人だったことから、同隊の工藤大介副隊長は「昨年の緊急事態宣言中は遭難事故者数は減少したが、昨年下半期以降は登山者が多くなり、事故件数も増加傾向にある」と説明する。
山岳事故は道に迷ったことによる焦りや疲労から、滑落、転倒、持病の再発など、新たな事故を引き起こす要因につながる。同隊では登山者に、入念な計画や重装備の徹底を呼び掛けるほか、入山前の「登山届」の提出を求めている。
今年1~5月の県内の山岳死亡事故者数は、秩父署管内で2人、小鹿野署管内で1人。3人はいずれも登山届を提出していなかった。工藤副隊長は「登山届は捜索・救助活動を行うための重要な手掛かりになる。捜索範囲を絞り、いち早く人命を救うためにも、入山前の提出を心掛けてほしい」と話している。
登山届の提出方法は、電子申請と手書き申請の2種類。電子申請はスマートフォンなどから手軽に提出できる。手書き申請は、登山地管轄の警察署や交番、または登山口に設置してある登山ポストに提出する。