埼玉・春日部に外国人4.5倍 しんちゃん家族像に共感 アジア人に通じる姿 10代~20代の若者がぶらっと
春日部市粕壁の観光案内所「ぷらっとかすかべ」を訪れる外国人客の数が急増している。4年間で約4・5倍に膨らみ、中でもアジアからの来訪が7割と際立つ。目的は、春日部が登場する人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の舞台地巡り。ぷらっとは作品をきっかけに市内を周遊してもらおうと、海外ファン向けの情報発信にも力を入れる予定だ。
19日正午過ぎ、ぷらっとに現れたのは中国から訪れた28歳の夫婦。2人ともクレヨンしんちゃんの大ファンで、スマートフォンで撮影した200体ものフィギュアが並ぶ自宅の写真を見せてくれた。しんちゃんの好きなところを聞くと、「いたずら好きだけど、友達に優しいから」。今回は新婚旅行で来日したという。
ぷらっとでは、もてなしの一環で外国人来館者に「どこから来たのか」「どこに行きたいのか」を尋ねている。その統計によると、2019年度の外国人来館者数は1780人だった。コロナ禍で20年度と21年度はそれぞれ227人、334人と落ち込んだものの、制限が緩和された22年度は3554人に回復。23年度は8061人に倍増した。24年度も5月末時点で1531人と前年を上回る勢いで、来館者の半数を占めているという。
主に10代後半~20代の若者が個人で訪れ、中にはしんちゃんのコスプレ姿で来館する「気合」の入ったファンも。国別では韓国と中国が圧倒的に多い。ぷらっとを運営する春日部市観光協会事務局長の折原章哲さん(60)は日本との距離が近いことに加え、「しんちゃんが描いている家族の姿に、同じアジア人として共感を覚えやすいのかもしれない」と推測する。
外国人客がぷらっとを紹介する動画を交流サイト(SNS)に投稿したことで、広く存在が知られるようになった。館内には英語、中国語、韓国語に対応した舞台地のマップやスタンプ巡りの台紙が置いてあるほか、グッズやパネル、土産なども豊富。外国語に堪能なスタッフがいる点も喜ばれている。
ほとんどの外国人客は都内に宿泊し、電車に乗って東武春日部駅東口から徒歩約3分のぷらっとに立ち寄る。駅周辺の作品にちなんだ場所や撮影スポットを巡り、滞在時間は半日ほど。ほかの名所や店舗には寄り道せず、市内の周遊までには至っていない。
折原さんは「しんちゃん以外の春日部の魅力もぜひ知ってもらえたら。そのためにネットを活用し、海外向けの情報発信にも力を入れていきたい」と話した。