埼玉新聞

 

まさかこんなことに 埼玉・熊谷うちわ祭、2年連続で諸行事中止 関東一の祇園、伝統あるお囃子の継承も危惧

  • 熊谷うちわ祭で2年連続の大総代を務め、異例の形で年番札を引き継ぐことになった富田満さん=熊谷市宮本町

 熊谷市の八坂神社大祭「熊谷うちわ祭」が新型コロナウイルスの影響で、山車・屋台の巡行などの諸行事を中止し、関係者による神事のみを行うことになった。諸行事の中止は昨年に引き続き戦後2度目。熊谷の夏の風物詩だが、2年連続で規模縮小となる。伝統あるお囃子(はやし)も、披露する機会がなく練習もままならず、関係者が継承を懸念している。

■異例の大総代

 「まさかこんなことになるとは思いもしなかった」。昨年に続いて年番町となった荒川区で2年連続の大総代を務める富田満(みつる)さん(61)は語る。うちわ祭で山車や屋台を巡行するのは12町区。そのうちの8カ町が毎年交代で、祭りを取り仕切る年番町を務める。そのトップが大総代で、一世一代の大役だ。

 大総代は7月22日夜に「お祭り広場」で行われる、大総代の交代式となる「年番送り」を実施している。通常は大勢の見物客が詰め掛ける中、今年の大総代が来年の大総代に「年番札」を手渡している。大総代にとっては最大の見せ場となるが、今年は関係者のみで実施予定で、例年のような盛り上がりは望めない。

 今年は市中心部にある星川通りに山車や屋台を勢ぞろいさせ、お囃子を響かせることを計画していた。山車や屋台は動かず、観光客に動いてもらう新しい形を考案。12カ町の総代長からは了承を得たが、総代長が地元に話をすると、「こんな時に大丈夫なのか」などと言われ、なかなか理解が得られなかったという。

■苦渋の決断

 諸行事の2年連続の中止は苦渋の決断だったが、うちわ祭に欠かせないお囃子の継承も危惧されている。お囃子は小学4、5年生からお囃子会に入って始めることができる。うちわ祭が近づいてくると、夕方から練習が始まり、各町内でお囃子の音色が聞こえ、本番への熱気を高めていた。

 お囃子会は主に高校3年生で一区切りとなる。小学5年生からお囃子を始めた第弐本町区の高校3年勝又瑶介さん(17)は「今年もできないのではないかと予想していた」と語る。高校3年で見せ場の場面を任されるため、今年は集大成となるはずの年だった。「来年はもしできれば参加したいが、これからは受験もあり、どうなるかは分からない」と胸の内を明かす。

 お囃子会の子どもは住民が多い地区では、地区内の子どもたちが大半を占めているが、近年は少子化によって他地区の子どもが参加している所もある。富田さんは「これからうちわ祭のお囃子を継承するためには、対象を市外在住も含めるなど門戸を広げることも考えないといけない」と話していた。

■熊谷うちわ祭

 熊谷市鎌倉町の愛宕神社に合祀(ごうし)されている八坂神社の祭礼。江戸中期の寛延年間から始まり、明治時代から現在の山車が登場した。名称は料亭がうちわを得意客に配ったことが由来とされる。毎年7月20~22日に実施し、例年は3日間で観光客約75万人が訪れ、「関東一の祇園」と称される。

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