埼玉新聞

 

<大宮立てこもり1週間>悪用されたネットカフェ、規制する法令なし 本人確認の義務付け、東京都のみ

  • ネットカフェの鍵付き個室、法規制なく

 立てこもり事件で悪用されたネットカフェの個室は、広さ約3平方メートルで、鍵付きのドア以外、開口部のない密室に近い部屋だった。県警や消防などによると、こうした形態の店や個室を規制する法令はないのが実情だ。

 風俗店の営業や規制について定める風営法では、設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難、かつ広さ5平方メートル以下の客席を設置して営む形態を、「区画席飲食店」と定義。届け出を義務付けるとともに、24時間営業が禁止されている。

 県警によると、風営法上で問題になるのは「飲食物を出すかどうか」。仮に飲食物を提供する場合でも、イートスペースのような空間があればいいという。区画席飲食店は昭和の時代に「カップル喫茶」や「デートクラブ」を想定して作られたものとされ、警察庁のまとめでは昨年末の許可数は全国でわずか1店舗しかない。

 また、ネットカフェは実質的に寝泊まりができる場所として、ホテルや旅館代わりに利用されている側面もある。旅館業法では旅館を営む際には許可が必要とされる。

 県生活衛生課によると、同法に該当する旅館とは「宿泊料を受けているか」「寝具を使用して施設を利用しているか」が主な判断基準。ネットカフェの場合、インターネットなどの利用料は宿泊料とは言えず、ベッドや布団の設置、寝具の利用もないため、同法上の宿泊には当たらないとされている。

 2009年ごろ、県南部のネットカフェが旅館業に当たる可能性があるとして立ち入り調査を受けたが、寝具などが確認できず宿泊とは見なせない事例もあったという。

 さいたま市建築総務課や消防局査察指導課によると、立てこもり事件が発生したネットカフェは建築基準法や消防法の基準を満たしており、鍵付きの個室自体が問題になることはないという。同店に関する建築基準法上の届け出はないものの、以前入っていた店が届け出をしている場合、その後に入る店は必ずしも届け出をする必要はない。同店は15年2月に消防設備などの届け出を受け、完成検査を実施している。

 事件現場の系列店では、カップラーメンや菓子を自動販売機や受付で購入でき、飲み物の自動販売機も置いてあるものの、調理した飲食物などは提供していない。料金は1時間400円~24時間3千円で、3時間以上の利用でシャワーを無料で使える。シャツやパンツ、かみそりなどの生活雑貨も購入でき、携帯電話の充電器や毛布も貸し出している。入店時に身分証を提示する必要はなく、氏名や連絡先の確認もない。

 日本複合カフェ協会(東京都)によると、条例で利用者の本人確認を義務付けているのは東京都のみ。協会の加盟店は6月現在、全国924店舗で、埼玉は約55店舗となっている。事件現場の店舗は系列店も含め加盟していない。一方、ネットカフェ自体は県警が把握している限り、今年2月時点で同店も含めて県内に69店舗あるという。

 同協会では店舗運営ガイドラインを策定し、防犯カメラの設置やスタッフの定期的な店舗巡回などの防犯対策を進めている。鍵付きの個室を導入するに当たっては地元の警察や消防と協議し、非常時には外側から扉の開錠が可能なようにしている。

 同協会は埼玉新聞の取材に、「事前に本人確認書類による確認を行い、会員制を採用することで店舗で発生する犯罪防止に努めている。今回の事件を受けて、これまでの防犯対策を改めて徹底することが必要と考える」と回答した。

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