埼玉新聞

 

パシリ、家畜…いじめられ女児欠席、さらに「陰キャ」と言われ不登校に 学校も対応悪く怒った親 重大事態の認定も遅すぎ…「報告書に関わるから」と遅れた理由を伏せていた市、じつは「法の理解不足」が理由だった

  • 三郷市いじめ問題調査委員会が作成した「いじめ重大事態調査報告書」。市教育委員会は公表していない

    三郷市いじめ問題調査委員会が作成した「いじめ重大事態調査報告書」。市教育委員会は公表していない

  • 三郷市いじめ問題調査委員会が作成した「いじめ重大事態調査報告書」。市教育委員会は公表していない

 三郷市立小学校で2022年、女子児童がいじめを受けた問題で、今年2月に調査委員会がいじめ防止対策推進法に基づくいじめ重大事態の調査報告書を作成したにもかかわらず非公表としていた市は19日、一転して市ホームページ上で報告書を公表した。重大事態の認定遅れが問題視されており、市教育委員会は理由について「法の理解が不十分だった。調査報告書を真摯(しんし)に受け止め再発防止に取り組む」と述べた。

 文部科学省は報告書を原則公表としている。保護者は当初、報告書の内容が不十分として市に再調査を要請。市が再調査しない決定をしたため公表を求めた。市教委は「被害者自身の意向」として、非公表から公表に転じた理由を述べた。

 調査委は23年8月~今年2月、当事者への聴き取り調査を含め会議を計19回開催。学識経験者や弁護士ら委員5人が報告書をまとめた。

 報告書によると、児童は22年4~7月、同じクラスの児童から「家畜」「パシリ」などと言われ、8月下旬から不登校になった。9月中旬、欠席日数が30日を超え、法で定められたいじめ重大事態の対象事案に。しかし学校や市教委が重大事態と認定したのは、10カ月後の23年7月だった。報告書は重大事態の認定が遅れた点について「法令順守の観点から大きな問題」と指摘している。

 児童側は事実認定に向けた経緯など「報告書の内容は不十分」と主張。調査委の議事録の開示などを求めている。

■親「放置された」(以下、初報記事)

 三郷市で2022年4月、当時市立小学校に通っていた女子児童がいじめを受け、市がいじめ防止対策推進法に基づくいじめ重大事態と認定し、今年2月に調査報告書が作成されていたことが6月28日までに分かった。市教育委員会は「総合的に判断した」として報告書を公表していない。被害に遭った児童と保護者は「いじめに遭ったのに放置された」と訴えている。

■重大事態認定に遅れ

 三郷市いじめ問題調査委員会が調査報告書を作成。埼玉新聞が入手した調査報告書や保護者の当時のメモによると、児童は22年4月上旬、同じクラスの児童から突然、「家畜」「パシリ」などと言われ、翌日から学校を欠席した。児童はいったん保健室に通ったものの、同7月上旬、同じ児童から「保健室登校なの知ってるよ」「陰キャ珍しいよね」などと言われた。8月下旬、再度話しかけられ、翌日から不登校になった。

 9月中旬、欠席日数が30日を超え、法で定められたいじめ重大事態の対象事案となった。児童はいじめを理由とする自傷行為があり、適応障害などの診断を受けた。

 しかし、重大事態の認定は10カ月後の23年7月まで遅れた。報告書は、重大事態の認定が遅れた理由について「法令順守の観点から大きな問題」と学校や市教委の姿勢をただした。

 保護者は22年4月以降、学校や市教委に複数回報告していた。調査報告書から「学校の初期対応で情報共有が不十分だった」「22年12月まで加害児童、保護者への聞き取りが行われていなかった」ことなどが明らかになった。保護者は「学校はいじめの事実確認を怠っていた」と憤る。

 市教委は取材に対し、認定が遅れた理由について「報告書の内容に関わる」として回答を避けた。

■報告書の公表求める

 報告書がまとめられた際、保護者は市教委から公表を希望するか否か問われた。市教委からは「公表することが望ましい」とされながら、「個人情報が特定される。ネットで情報が拡散され興味本位の書き込みが起こる可能性がある」と説明を受けたという。

 市教委の説明に戸惑った保護者は当初、市に再調査を求めることも踏まえ、いったん公表を希望しない意向を示した。市は今年4月、再調査を実施しないと保護者に回答。市教委は報告書を公表しない理由について、「総合的に判断した」と回答している。

 保護者は「(報告書は)いじめに対し学校側がどのように対応したのか説明がない。いじめの背景や原因について言及していない」と改めて公表を求めている。

 市教委は「公開するなという意図を持って説明したわけではない」と当初のやりとりについて弁明。保護者の意向を受け、公表に向け再検討するとしている。
 

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