埼玉新聞

 

<新型コロナ>ぴたっと…急に途絶えた客足に驚き 埼玉でまん延防止初指定の自治体の飲食店、影響を懸念

  • まん延防止等重点措置の適用を受け、時短営業を知らせる張り紙を掲示する飲食店=20日、鶴ケ島市内

 新型コロナ特措法に基づくまん延防止等重点措置の県内適用区域が20日、20市町に拡大された。鶴ケ島市や三郷市、伊奈町など5市町は初めての指定。対象自治体にある飲食店などは、客足が急に途絶えたことに驚き、売り上げへの影響を懸念した。

■鶴ケ島市

 まん延防止等重点措置区域に初適用された鶴ケ島市内で洋食店を営むオーナーシェフの男性は「まん延防止等重点措置の適用なんて、まさかと思った。ほかの市や町と比べ、鶴ケ島市は大丈夫だと思っていたのに」と落胆する。

 時短営業要請に伴い、午後10時までだった営業時間を20日から来月22日の間、夜8時までにした。県の認証を受けており、酒類の提供は1人か同居家族のグループのみ午後7時まで可能となるが、「夜の営業が短くなった分、売り上げに影響が出てくるかもしれない」と懸念する。

 日頃から地域の飲食店と交流してきたオーナーは「今後、各店舗が自分だけの新しい“武器”を見つける動きが出てくるのではないか。うちはテークアウトに力を入れ、工夫しながら営業を続けたい」と話していた。

 市内の酒販店は、飲食店との取引量がコロナ前と比べ、半分以上減っているという。店主は「(今でも)取引先の居酒屋、すし店などは経営が苦しそう。そこにまん延防止措置とは…」と心配顔。

 市商工会には19日以降、県の認証を受けるにはどうしたらいいのかなどについての問い合わせが20日昼ごろまでに20件近く寄せられた。職員は「事業者は、いかに営業を継続していけるかという点に敏感になっている」と指摘する。

 一方、市は「市内の感染者が極めて急増している」と、20日に市独自の「特別警戒態勢」を敷いた。同日から急きょ、市民センターや児童館、図書館などの公共施設を31日まで休館することを決めた。

■三郷市

 JR三郷駅前で「鉄板家はなぶさ」を営んでいる店主の中村英人さん(48)は、「営業時間が午後8時までと約1時間短くなり、まだ先は読めないが、現時点では協力金と売り上げのバランスが取れているので県の要請には従う」と協力する姿勢を示した。

 しかし、生活に影響するような事態に陥れば背に腹は代えられないと悩みを打ち明け、「従っていない店舗もあるが、批判する気にはなれない」と話した。

 県の感染対策の認証を受けた店は午後7時まで酒類の提供ができることも売り上げに大きく影響していると指摘。「売り上げの大半を酒類に依存している。もし酒類を提供できなくなる事態になれば、協力金の引き上げを要望するなど対応を考えなければならない」と厳しい実情を訴えた。

■伊奈町

 「おとといまで夜のお客さんがたくさん来ていたのに、昨日からぴたっと来なくなりましたよ」

 伊奈町中央にある懐石料理店「さとし」の板長鈴木聡さん(44)は、伊奈町がまん延防止等重点措置の対象になったことについて、「まあ、仕方ないですね」と状況を冷静に受け止めた。「徐々に良くなってきた矢先なので、またか…という感じ。伊奈町は人口の分母が小さいから、覚悟していた」と話す。

 店は昨年4月、緊急事態宣言が行われると同時に予約がゼロになった。一度、店を閉めようかとも考えた。「でもそうしたら店が死んじゃう。道具も使わないと生気がなくなるんですよ」。安価でも味を損なわない工夫をしてテークアウトの弁当だけに切り替えた。するとこれまでの客層以外の人たちが訪れるように。

 おかみの鈴木せつさん(71)は「売り上げは下がったけれどお客さんは広がった。しかも何度も来てくれる。悪いことばかりじゃない」と笑顔を見せる。

 昨年、いち早くテーブルにアクリル板を導入し、空気清浄機や消毒液を完備した。県や町が実施する「新しい生活様式安心宣言飲食店+認証制度」にも積極的に協力している。「(感染者が)増えてきているのは事実。気を付けてできることをするしかない」と鈴木聡さんは話した。

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