埼玉新聞

 

「正しい言葉を使いなさい」日本語と英語つなぐ 岩波英和辞典を編さんの英文学者・島村盛助は埼玉出身 生誕140年を記念して企画展

  • 島村盛助の関連資料が並ぶ展示=宮代町郷土資料館

    島村盛助の関連資料が並ぶ展示=宮代町郷土資料館

  • 島村盛助(宮代町提供)

    島村盛助(宮代町提供)

  • 島村盛助の関連資料が並ぶ展示=宮代町郷土資料館
  • 島村盛助(宮代町提供)

 ロングセラーとなった岩波英和辞典を編さんし、「日本語と英語をつないだ人」と呼ばれる宮代町出身の英文学者で教育者の島村盛助(1884~1952年)の足跡をたどる展示が、町郷土資料館で開かれている。8月9日の生誕140年を記念し、郷土の偉人を知ってもらおうと企画。原稿や写真、絵画などの関連資料約80点を紹介している。10月20日まで。

 盛助は百間中村(現宮代町)に生まれた。島村家は江戸時代を通じて村の名主を務めた由緒ある家系。父の繁は直心影流の免許皆伝を得て自宅敷地内に剣術道場を開き、百間村の村長も務めた。

 地元の小学校を卒業した盛助は旧制浦和中学校などを経て、東京帝国大学文科大学に入学。英文学を研究し、卒業後は埼玉中学校(現県立不動岡高校)や川越中学校(現県立川越高校)などで英語を教え、埼玉大や東大にも出講した。作家としても活動し、文芸誌や新聞に小説を発表。ミルトンの小説「失楽園」などの有名作品も翻訳した。

 最大の功績とされるのが岩波英和辞典の編さんだ。1930(昭和5)年から取りかかり、6年後に刊行。単に言葉の意味を並べるのではなく、理解しやすいよう語源から歴史的変遷に従って掲載しているのが特徴で、「英語をより深く学べる辞典」として人気を博した。企画展では、貴重な初版本を展示している。

 「正しい言葉を使いなさい」と厳しく指導していた盛助。教え子からは「真面目で怖い先生」と評されたが、酒が進むと小唄を披露するなどおちゃめな一面も。絵心もあり、英国留学中に描いたロンドンの風景画や自画像を収めたスケッチブックも紹介している。

 同館学芸員の横内美穂さんは「展示を通じて、盛助が手がけた多くの作品を知ってもらえたら。生誕140年の節目に、改めて郷土の偉人に目を向けてほしい」と来館を呼びかけている。

 入館無料。休館日は月曜と祝日の翌日、9月24~27日。問い合わせは、同館(電話0480・34・8882)へ。

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