<新型コロナ>緊急宣言の埼玉、観光地ホテルのキャンセル始まる 五輪会場周辺の店「何も変化ないのでは」
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2日、埼玉全域に緊急事態宣言が発令された。開催中の東京五輪に重なり、夏休みを直撃した3度目の宣言発令。五輪会場となっているさいたま市の飲食店からは嘆き節が聞かれ、観光シーズンを迎えた長瀞町のホテルでは宿泊客のキャンセルを心配する声が上がった。
さいたま市浦和区のスポーツバー「ティナラウンジ」は、市内に4月から「まん延防止等重点措置」が適用以来、アルコール類をほとんど提供していない。フロアマネジャーの前橋俊輔さん(36)は「(時短など)国の要請には従うが、今さら緊急事態宣言となっても何も変わらないのでは」と嘆く。
今までワールドカップなどの国際試合では、入場制限するほどの盛り上がりを見せていた。3日は埼玉スタジアムで五輪サッカー男子の準決勝が行われる。コロナ禍でなければパブリックビューイングも行う予定だったが、全て中止。前橋さんはイベントができない歯がゆさも感じながら「オフィス街なので会社員を対象にしたランチをメインに、今まで通り感染対策を十分に取って営業していきたい」と話した。
大宮区の「力の蔵 大宮東口店」の男性店員は3度目の宣言に「我慢ばかり続き、国や県は何とか有効な対策を取ってほしい」と要望する。酒類を一切提供できなくなり、「夏場でビールが一番おいしい時期に提供できないのは、申し訳ない気持ちでいっぱい」と残念そうに話していた。
東京五輪のバスケットボール会場のさいたまスーパーアリーナ。宣言が発令された2日、女子日本代表の試合が行われた。アリーナ前で記念撮影していたさいたま市の男性(63)は「宣言が何回目かも分からない。若い人は政府の言うことを信用していないのではないか」。
ワクチンの2回接種を終えたさいたま市の女性(70)は、菅義偉首相を題材にした映画「パンケーキを毒見する」を友人に誘われ、JRさいたま新都心駅前で待ち合わせをしていた。「トップが『安心・安全』と繰り返し、質問をはぐらかしてばかり。具体的な数字を示さないと、頑張れない」と語り、五輪については「選手は悪くないので、テレビ観戦して応援はしている」と話した。
宣言前の最後の週末となった7月31日、県内屈指の観光スポットの長瀞町は多くの観光客でにぎわっていた。家族4人で荒川のライン下りを楽しんだ都内の40代女性は「子どもがせっかくの夏休みなので、今のうち思いっきり遊ばせてあげたい。宣言中は都内でおとなしく過ごすしかない」と話していた。
今回の感染防止措置では、宿泊事業者に対する休業要請は出ていないが、同町本野上のホテル「花湯別邸」の支配人、大国(おおくに)晶子さん(50)は「前回の宣言時のように、宿泊キャンセルが多く出ないか心配」と漏らす。
今年1月の宣言期間中は、GoToトラベル事業が停止されたこともあり、予約の9割がキャンセルに。宿泊客の減少とともに、シフトに入れなくなった調理スタッフが退職してしまい、現在も人材不足に悩まされている。
8月中は8割以上の部屋が予約で埋まっているが、7月末から数件のキャンセルが入り始めた。大国さんは「今年の夏は厳しいかもしれないが、ワクチン接種が進むにつれて、客足は必ず戻ってくる。再び観光客で町がにぎわう時に、最高のおもてなしができるよう、人材募集を積極的に行いたい」と前を向いた。