埼玉新聞

 

衰弱した犬…餌や水をあげない元ブリーダー「いらないから」 親族女性も“狂犬病”予防注射を受けさせず 2人を書類送検 繁殖できなくなった犬、“目印”で区別していた 以前も犬を窒息死させ罰金命令

  • 毛呂山で運営していた飼育施設=6月27日午前10時ごろ

    毛呂山で運営していた飼育施設=6月27日午前10時ごろ

  • 現場となった動物繁殖施設=14日午前、毛呂山町

    現場となった動物繁殖施設=6月14日午前、毛呂山町

  • 毛呂山で運営していた飼育施設=6月27日午前10時ごろ
  • 現場となった動物繁殖施設=14日午前、毛呂山町

 毛呂山町内の動物飼育施設で、繁殖のために飼育していた犬に対して虐待をするなどしたとして、県警は1日、動物愛護法違反(虐待)の疑いで、同町西大久保、元動物販売業の無職男性(81)をさいたま地検川越支部に書類送検し、同法違反と狂犬病予防法違反の疑いで、同施設の動物取扱責任者の親族女性(40)を同支部に書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。

 書類送検容疑は5月12日、自宅敷地内にある動物飼育施設で飼育していた犬1匹に対して、餌や水を与えずに衰弱させ、また、親族女性は昨年4月1日~6月30日までの間、犬2匹に対して狂犬病の予防注射を受けさせなかった疑い。2人は容疑を認めているという。

 捜査関係者によると、虐待されていた犬は、男性らに繁殖に使えなくなった犬と判断され、同施設内にある目印が施されたケージに入っていた。虐待について男性は「いらなくなった犬だった」などと供述しているという。また、予防接種を受けさせなかった理由について、親族女性は「(元動物販売業者に)従っていた」などと供述しているという。

 男性は6月、繁殖のために飼育していた犬を窒息死させたとして、動物愛護法違反で逮捕された。その後略式起訴され、川越簡易裁判所から罰金40万円の略式命令が出されていた。

■気軽な「衝動買い」問題 愛護法、守られない実態も

 6月に実質的な経営者の男が逮捕され、廃業届が出された毛呂山町内の動物飼育施設。県生活衛生課によると、飼育していた犬約200頭のうち4分の3は県の保健所が保護し、動物愛護団体の協力を得て里親などの引き取り先が見つかったが、残りは同施設に残っているとみられる。

 俳優の杉本彩さんが理事長を務める公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の松井久美子事務局長は「需要があるからペットショップやオークションが存在する。気軽に幼齢動物を衝動買いできる環境をなくさなければ」と訴える。

 2019年の改正動物愛護法は生後56日以内の販売禁止や、繁殖の年齢上限などを設け、動物虐待の罰則も強化。しかし「全国の犬猫を扱うブリーダーやオークションで規制が守られていないという調査結果がある。売れ残りや繁殖期間が終わった犬猫を保護犬、保護猫に出すなどビジネスに利用している実態もあり、受け皿があると規制を強化しても何も変わらない」と言う。

 同団体は行政に改善を要望する活動も行う。事務局の木野内晃子さんは「何度立ち入りしても虐待を見逃していた自治体もあった。適切な行政指導、処分をしてほしい」と強調した。 
 

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