泣き叫ぶ夫、妻と3歳娘が死亡…突然の事故 握り返さない娘の手 心壊れそうで顔見れずお別れ、望むことは
一般社団法人「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」は22日、交通事故の遺族の声を伝える「命の里プロジェクト」をオンラインで開催した。東京・池袋の暴走事故で妻子を亡くした男性らが講演し、「防げる交通事故はたくさんある。思いやりのある優しい運転をすることで、事故は少しずつ減らせる」と訴えた。
松永拓也さん(34)は2019年4月、池袋の暴走事故で、妻の真菜さん=当時(31)=と長女莉子ちゃん=当時(3)=を亡くした。真菜さんは莉子ちゃんが生まれたとき、「かわいい」と言って涙を流したという。松永さんが人さし指を差し出すと、莉子ちゃんは握り返してくれた。「小さな手の温かさ、命の尊さを感じた」と振り返った。
2人が「お帰り」と言ってくれる日常は、一瞬にして失われた。警察からの連絡を受けて病院に向かう。医師からは「即死でした」と宣告され、ただただ泣き叫んだ。2人のもとに案内され、妻の顔にかけられた布をめくると、顔は傷だらけで氷のように冷たかった。娘の顔を見ようとすると、看護師から見ない方がいいと言われた。小さな手を握ると硬く冷たかった。「莉子」と呼んでも握り返してくれない。「生まれた時の温かい手とあまりにも対照的で、底知れぬ絶望を感じた」
翌日、2人が自宅に到着した。娘の顔を見ようとしたが、自分の精神が壊れてしまうと断念した。「最期のお別れで、娘の顔すら見ることができない無念さは計り知れない」。生きている意味がないと自問自答したこともあったが、2人の命を無駄にしたくないと、あいの会に参加して活動している。「交通事故は突然の別れだけでなく、遺体の無残さは尋常ではない。愛する人のその姿を見ることは、言葉にできない。誰にもこんな体験をしてほしくない。被害者にも遺族にも加害者にもなってほしくない。優しい運転や交通安全を厳守する輪が広がれば、それぞれの日常を守っていける」と話していた。
あいの会代表で、飲酒運転の暴走車による事故で、夫の両親を失った小沢樹里さん(40)=東松山市=も講演した。友達と話せなくなり、社会と遮断されていく感覚に陥ったと説明。警察、検察、民間などの被害者支援に支えられたとして、「一人で悩まず、被害者の支援制度を頼ってほしい」と呼び掛けた。犯罪被害者は刑事手続きや裁判で仕事を休む必要があるとして、被害者の特別休暇制度の義務化の必要性も訴えていた。
あいの会は、ホームページ(https://i-nokai0708.com)で交通犯罪被害者の相談を受け付けている。