新1万円札の「顔」に渋沢栄一 「郷土の誇り」「喜ばしい」深谷市民ら歓喜 旧渋沢邸、平日の3倍の見学者
紙幣の「顔」が20年ぶりに刷新され、渋沢栄一翁が新1万円札のデザインに決まった。地元の深谷市は朗報に「郷土の誇り」「喜ばしい」と歓喜に沸いた。深谷市下手計の渋沢栄一記念館では市民ら約200人が万歳三唱で喜んだ。同市血洗島の旧渋沢邸「中の家(なかんち)」にも多くの人が訪れ、改めて郷土の偉人の歩みを振り返った。
■15年前から10万円札レプリカで紙幣化PR
渋沢栄一記念館で記者会見を開いた小島進市長は「渋沢栄一翁が唱えていた論語とそろばん、忠恕(ちゅうじょ)の心を今の人たちに伝えたい部分があるのではないかと感じている」と選ばれた理由について触れ、「市民の誇り。まさにお札の顔にふさわしい。渋沢栄一記念館などを訪れてもらい、栄一翁が何をしたのか、何を考えていたのか、何を志していたのかを一人でも多くの人に分かってもらいたい」と語った。
約15年前から、渋沢の10万円札レプリカを作るなどして紙幣化をPRしてきた町おこし団体「青淵会」会長の宮川友安さん(72)も会見に同席。「驚きの一言。とてもうれしい」と興奮した様子で語った。
「中の家」には9日午前中だけで、約40人が見学に訪れた。清掃や見学者に説明をしている深谷市寿町のボランティア足立弘さん(78)は「仕事にも力が入ります」と対応に追われていた。
朝の報道で知り「中の家」に初めて来たという群馬県太田市の北村静枝さん(69)は「近くに立派な人がいて感激です。刺激も受けました。500の事業に関わったと聞き、どんな事業だったのかを知りたくなった」と話した。
熊谷市肥塚の伊藤正春さん(70)と妻孝子さん(73)は孫の夏休みの自由研究の題材に薦めたという。孝子さんは渋沢栄一の出身地区に隣接する豊里地区出身で、「感動です」と感無量の様子。正春さんも「歴史を感じ、それだけ偉大な人だった。この場所もメジャーになりますよ」と喜んだ。
1995年に開館した渋沢栄一記念館は渋沢の遺墨や写真、資料など約150点を展示。9日午後3時現在で、平日の3倍に当たる120人以上が訪れた。渋沢と同じ2月13日生まれの解説員木村栄一さん(70)は「同じ名前でうれしい。渋沢栄一は郷土深谷の誇りです」と目を細めた。「渋沢栄一翁と論語の里ボランティアの会」事務局長の山本容敬(やすのり)さん(71)も「イベントを通して栄一翁と関わってきた尾高惇忠、韮塚直次郎の深谷3偉人も紹介したい」と意気込む。
深谷市は渋沢栄一翁の心を受け継ぐ教育に取り組んでいる。出身地にある市立八基小学校の4年生、羽成結菜さんと神成郁咲さんは「近くに住んでいた人が1万円札になるなんてすごい」と目を輝かせ、「栄一翁のことをたくさん学んで皆に役に立ったり、活躍する人になりたい」と話した。