岸田首相、退陣へ…街の声「なぜお盆に表明」「税収を上げ、結局何したかったのか」「海外へ資金援助が多く、世間は納得していない」「もう少し続けて」 自民県連会長「悩んでいたのでは」
岸田文雄首相がお盆休み真っただ中の14日、9月に予定されている自民党総裁選に立候補しない意向を表明した。党派閥の政治資金問題による国民の不信を払拭できず、長引く物価高などで支持率の低迷もあり、求心力が戻らず再選が難しいと断念した形だ。岸田内閣は2021年10月の発足から約3年で退陣する。首相の突然の退陣表明に県民からは「なぜお盆なのか」など驚きや戸惑いが広がった。政権運営を批判する声も聞かれた。次期首相に対しては「政治改革の推進」や「実行力」を求める意見が相次いだ。
■「政治とカネ」不信払拭できず
子育て中というさいたま市大宮区の会社員女性(49)は「なぜお盆の表明」と、多くの国民が休暇を取得するお盆期間中の退陣表明を疑問視する。現状の政治については「今までは社会的、経済的に強い人へ向けた政治だった」と分析しつつ、「今後は必要な人に、必要な支援が届く政治であってほしい」と話す。
支持率低迷の主因ともいえる政治資金問題について批判的な評価が相次いだ。川越市の自営業男性(64)は「総裁選には当然、出ると思った。驚きが半分だが、支持率が上がらない中で本人が判断したのだろう」とみる。裏金事件について「子どもに説明がつけられるのか。自分だけが辞めればいいという問題ではない」と指摘した。
長瀞町の郷土史家野口正士さん(82)は、ウクライナ支援の継続や日韓関係の改善など、岸田総理が行ってきた外交政策の実績を評価する。一方で、「安倍元首相の後継者というイメージが拭えないので、長年染みついた自民党の『政治とカネ』の体質を変えるリーダーには適していない」との見解を示した。
政権運営全般に厳しい意見も。さいたま市見沼区の会社員女性(59)は「就任時に人事をやりたいと言ったことが印象にある。税収を上げ、結局、何をやりたかったのか。景気回復など、国民の思いと、やってきたことが乖離(かいり)している」と実績への不満を述べた。
春日部市の女子大学生(22)は「評価できる点があまりピンとこないのが正直な印象」と批判。「海外への資金援助も多かったが、どうしてそうするのかという理由が世間から納得が得られていない印象があった」とも語った。
首相本人について美里町で介護施設を営む小出操さん(70)は「岸田さんは清潔感があるイメージだったけど、果たして決断力はどうだったのか」と首をかしげた。
山積する課題の改善への道筋を整えてから退陣しても遅くないのではとの声も聞かれた。久喜市の理容業森田一男さん(49)は「岸田さんのせいで政治資金問題が起きたわけではない。どうして最後まで職務を全うしないのか」と疑問を呈する。自民党総裁が交代しても失った信用は回復しないと指摘し、「少しでも良くなる筋道を示してから退陣してほしかった」と話した。
所沢市に帰省中の主婦(50)は「株価の乱高下や物価高で大変な時代によく頑張っているな、大変だなと思っていた。やってくれただけでありがたいという感じ。もう少し続けてもよいのでは」と首相続投に一定の理解を示した。
次期首相については「閉塞(へいそく)感を打破し、前向きになるメッセージを世界に発信できる人」「野党の意見を取り入れ、世界と未来を見据えた政治改革ができる人」「年金問題など課題に目を向け、活動していることが国民に伝わる人」といった意見が聞かれた。
■熟慮の上での決断/大野元裕知事
突然の一報で私自身も驚いているが、不出馬の表明は、熟慮の上での決断と感じている。総理の在任期間中、新型コロナの5類への移行や、賃上げの実現に向けた環境整備、子ども子育て政策などに実績を残されてきた。他方で、政治と金の問題が出てきており、政治の信頼を取り戻していくことが重要な課題となっている。来たる自民党総裁選挙は、政党の組織内の選挙であり、知事としてコメントする立場にはないが、自民党総裁は総理大臣の選出に直結する可能性が高いと理解しているので、最もふさわしい方を選んでいただくことを期待している。
■充実した論戦希望/柴山昌彦・自民党県連会長
岸田総裁が総裁選に出馬しないと表明され、会見も行ったと承知している。自民党が変わるためには総裁選に出馬しないことが第一歩とコメントしたと伺っている。大変重い決断と受け止めている。先月の憲法改正に関するコメントなどで総裁選への意欲を示したと捉えていたが、やはり内閣支持率の低迷などでご自分で悩んでいたのではないかと思われる。改革への道筋は一筋縄では行かないと思うが、候補者には充実した論戦を国民の皆さんの前で展開していただけるよう強く希望する。