菅首相の退陣表明 埼玉県民から厳しい意見「中途半端」「物足りない」 一方同情する声も「コロナ禍では」
就任から1年。菅義偉首相が3日、退陣の意向を表明した。たたき上げの実務家を売りにしたが、政権浮揚を見込んだ東京五輪開催中も新型コロナウイルスの感染は拡大。「対策が中途半端」「リーダーとして物足りない」。県民からは厳しい意見が相次いだ一方、コロナ禍で難しいかじ取りを迫られ「かわいそう」「誰がやってもうまくいかない」と同情する声も聞かれた。
上尾市の建設会社社長神田健さん(60)は「菅総理本人の意思、決断が見えない。コロナ対策も経済を優先するせいで中途半端になってしまった」と指摘し、「子や孫たちのことを思うと、これからこの国で生きていくのは大変だ」とコロナ禍が続く状況を憂う。
さいたま市の医療関係者の女性(34)は「コロナ対策を理由に不出馬なんて意味が分からない。それならやるべきことをやってほしい」と批判。「コロナ禍での混乱は医療や行政がITを活用できないから発生していることも多い。他国に比べて遅れているIT化を国として本気で考えてほしい」と訴えた。
「新型コロナについての記者会見を聴いていても、菅さんの思いは響いてこなかった。不出馬は仕方ない」と評するのは川越市の40代女性。「海外と比べ、島国の日本はコロナ対応でもっと成果がでると思ったが、良くならなかった。自粛を求める一方で、オリンピックを開催していて、ちぐはぐな感じがした」
日本養豚事業協同組合代表理事で加須市の「松村牧場」社長の松村昌雄さん(71)は「総理になった時から、リーダーとして物足りなさを感じていた。ナンバー2(内閣官房長官)ではいい仕事をしたと思うが、ナンバー1(総理)としては心配だった」という。「コロナ禍を乗り切ってほしいと期待していたが、残念な結果。東京五輪、パラリンピックの開催もしんどかったのでは。何よりも、世論が離れていく状況がつらかったのでは」とも分析した。
一方、コロナ禍で難しいかじ取りを迫られたことに同情する声も。秩父市の石渡昇吉さん(74)、ハツ子さん(73)夫妻は「もっと続けてほしかった」と口をそろえる。自民党神奈川県連が選挙運動に協力しない考えを示すなど、菅政権への逆風は一段と強まっていたが、昇吉さんは「コロナ禍が続く限りは、誰がやってもうまくいかない。国をまとめるのが難しい状況の中で、辞任を選ぶしかなかった菅さんがかわいそう」と話し、ハツ子さんも「いま交代しても、リーダーシップを取れそうな人はいない」と同調した。
春日部市で飲食店を経営し、地元商店会で会長を務める武井良明さん(57)も「追い込まれた感じでかわいそう」。コロナ対応について「日本の悪いところだけがクローズアップされ支持率が下がった気もする。何もやらなかったわけではないが、引っ張っていけなかったことは確か」と話した。