社会貢献の出発点は「子どもが生きていく未来」 モデル・冨永愛インタビュー
ファッションモデルとして世界の第一線で活躍し続け、俳優業でも注目されている冨永愛は、公益財団法人ジョイセフや消費者庁エシカルライフスタイルSDGsのアンバサダーを務めるなど、社会貢献活動にも熱心に取り組む。東京都内で開かれた旅行ツアー「GREEN JOURNEY」発表会に登壇した冨永に、活動の核となる価値観や今後の目標について聞いた。
【とみなが・あい】1982年生まれ、相模原市出身。ニューヨーク・コレクションやパリ・コレクション(パリコレ)で活躍し、NHK総合のドラマ「大奥」での将軍吉宗役など俳優としても注目を集める。
▼記者 持続可能な開発目標(SDGs)やサステナブル(持続可能)の活動に多くコミットしています。そうした価値観の大切さを意識するきっかけは何かありましたか。
◆冨永 自然豊かな場所で育ったので自然環境への興味や好奇心はもともとありましたが、子どもを出産したことで、その関心がより強くなりました。子どもを育てるということは、人を育てていく責任が伴います。子どもが生きていく未来のこと、そして子どもの体のことを考えるようになり、自分自身以外のことにも目を向けるようになりました。
この夏の「外に出られない!」という異常な暑さにも考えさせられるものがあります。悠長に構えてはいられない、なんとかするために変えていくべきことがあるはずだと感じています。
▼記者 これまで、どのような基準でコミットする活動を選んできましたか?
◆冨永 自分にとって、活動が身近であったり興味があったりすることを選んでいます。興味や関心というのは、つながっていくものなんですよね。もともと食べることは大好きですが、子どもが生まれて、安心安全な食について考えるようになり農業に関心を持つようになりました。そして、そこから今度は自然環境の循環に興味が湧いてきたんです。
▼記者 精力的に社会貢献活動を続けてきた理由は?
◆冨永 私は運にも人にも恵まれてきたなと感じているので、これまで受けた恩を次の誰かに送りたい、そのために何かしたいという思いがあります。だから「社会貢献」と言えるような活動をしているんだと思います。「恵まれている」と感じている人こそ、行動しなければいけませんよね。
▼記者 冨永さんが実践していることや、私たちにもできることは何かありますか?
◆冨永 社会貢献とか環境保護と言うと、自分自身に余裕がないとなかなか手が出しづらいと感じる方が多いと思います。我慢や金銭的負担を強いられるのではないかと思われることもあります。でも、お金をかけなくても「ゴミを減らす」ことはできます。冷蔵庫の中身を把握するだけでも、ずいぶん変わってくるんじゃないでしょうか。「あ、豆腐あった、使わなきゃ!」みたいな。たくさんの人が無理なくできる小さなことを積み重ねていくことが、大きな変化を生むのだと思います。
▼記者 冨永さん自身についても聞かせてください。モデルとして、活動休止を経て30代後半で再びパリコレに挑戦し、見事ステージに立ちました。今年6月に刊行した著書「冨永愛 新・幸福論 生きたいように生きる」では「100歳になってもランウェイを歩ける私でいたい」と宣言しています。目標に向けて、心がけていることは何かありますか?
◆冨永 すごくいっぱいあります(笑)。モデルであり続けることは本当に難しくて、大きな目標です。でも一言で言うなら、今を大事に生きるということなんじゃないかと思います。今、目の前にあることを一生懸命やること自体が挑戦になっているんです。俳優のお仕事もそうです。そういう一つ一つを丁寧に積み重ねていきたい。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、それが一番大事だと思っています。
▼記者 目指す自分像はありますか?
◆冨永 ずっと変わらず、自分自身でありたいですね。何を幸せと感じるのか、何を自分が求めて生きていくのかを人生を通じて考え、納得できるあり方を体現していく。それが、自分の生きる意味なんだろうと思います。
(取材・文=共同通信・團奏帆 撮影=佐藤まりえ)