浸水被害が減少 大雨で100戸以上が床上浸水するような被害は10年以上なく 埼玉・川口市 下水管の改良や地下の雨水貯留施設を整備 まち自体に巨大な調節池機能を
川口市の浸水被害がここ数年、減少傾向にある。大雨により、市内100戸以上が床上浸水するような甚大な被害はここ10年以上出ていない。下水管に雨水をより多く貯留できるよう管を広げると同時に、局所対策として地下の雨水貯留施設を整備。まち自体に巨大な調節池機能を持たせている。市上下水道局下水道建設課担当者は「目に見えない取り組みだが、確実に実になっている」としている。
7月31日、県内に猛烈な雨が降り、川口市内では午後7時までの1時間に約101ミリ。県が2日午後5時までにまとめた県内の住家被害は、床上浸水107棟、床下浸水165棟。県南部の複数の自治体は、床上・下浸水被害が2桁に上ったが、大雨、洪水警報も発表された川口市内は、床上・床下浸水被害が各1棟にとどまった。
川口市はこれまで、たびたび風水害に見舞われている。「市制50年記念誌」(1983年刊)によると58(昭和33)年の「狩野川台風」では市内2万7043戸(約96%)の家屋が床上・床下浸水し、421人が死傷する甚大な被害が出た。同誌は当時の惨状を「川口郵便局、川口署前は腰から胸の深さ、川口駅前広場のロータリー付近は市内では唯一の『陸地』だったが、増水一方のため同夜6時頃には川口駅も浸水した」と記録している。
市の地域防災計画資料によると、こうした浸水被害は近年になっても発生しており、昨年6月の台風2号では64戸で床上浸水、118カ所の道路冠水が発生している。
一方で「最近は街中で水が出なくなった」といった声も聞かれるという。7月31日の大雨でもかつてのような甚大な被害は出ておらず、市下水道建設課担当者は「雨の降り方にもよるが」としつつ、市が取り組む、下水管の機能向上が奏功しているとみている。
市では85年ごろから、市南部の南平地区、横曽根地区を中心に下水管の改良に着手。断面が直径1・5メートルの円形だった下水管を道路の幅に合わせ、断面2メートル×3メートルの四角い管にするなどして管の貯水能力を向上させている。「広い断面積の管の距離が伸びれば、それだけ貯水量も多くなる」と担当者。これまでに南平地区では約4千メートル、横曽根地区では約1600メートルが高機能化され、従前より多くの一時貯水能力を持つようになった。下水管改良は市中心部を東西に延びる六間通りや、八間道路でも行われている。
併せて市はここ10年で、上下水道局が管理する4カ所を含め、市全体で23カ所の雨水貯留施設を整備。直径4・65メートル、長さ418メートルの巨大な「東川口貯留管」は昨年3月に供用開始となり、これまで大雨のたびに通行止めが発生していた、JR東川口駅周辺高架下の浸水対策を担う。
一方で、都市部のコンクリートやアスファルトの地面に降った雨は側溝から川に流す以外の排水方法がないことから、そもそもの地形の高低や、降雨の条件によっては排水に時間がかかるなど、浸水被害を完全にゼロにすることは難しいという。