埼玉新聞

 

<熊谷小4ひき逃げ>事件から12年、定着しない「罪名変更」 犯人探す母が全力、今も新たな情報提供が

  • 小関孝徳君の仏壇の前で手を合わせる孝徳君の母親=24日午後、熊谷市の自宅

 熊谷市で2009年9月、小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件は、30日で発生から12年を迎える。今年も死亡ひき逃げ事件の時効が迎えた事案が全国で相次いでいるが、孝徳君の母親は死亡ひき逃げの罪名変更や時効撤廃、法改正を訴えている。母親は「時効まであと8年しかないなので、やれることは全部やりたい」と語る。

 事故が起きたのは09年9月30日午後6時50分ごろ。孝徳君は自転車で帰宅途中に、熊谷市本石1丁目の市道で事故に遭った。16年に道交法違反(ひき逃げ)の時効が成立。県警は自動車運転過失致死罪の時効が目前だった19年9月、罪名を危険運転致死罪に変更し、捜査を継続することになり、時効は10年延長された。

 危険運転致死罪は飲酒運転や著しい信号無視、制御不能な高速度などで車を運転して人を死亡させた場合に適用される。適用罪名の変更は県警では初めてだった。母親は死亡ひき逃げの時効撤廃や、間もなく時効を迎える全国の未解決の死亡ひき逃げ事件についても、警察庁に全国の警察へ罪名変更を指導するよう嘆願書を提出した。

 しかし、罪名変更は定着しておらず、今年2月に山梨県、5月に熊本県、9月21日には静岡県の死亡ひき逃げ事件が3件とも時効を迎えた。母親は3件の遺族に罪名変更という方法もあることを手紙で伝えていた。「どんな気持ちで遺族が時効を迎えたのかは分からないが、こんなに悔しいことはない。時効を迎えれば犯人は罪に問われない」

 母親は救護措置を怠って逃走する行為自体を危険運転と捉える「危険運転発覚免脱逃走致死罪」や「危険運転発覚免脱逃走致傷罪」の新設も求めている。「ひき逃げ事件は犯人が逃走し、危険運転であった可能性がある以上、捜査開始時は過失運転ではなく、危険運転で捜査をするべき」と訴えている。

 「まだ犯人は捕まっていないの」「こんな事件があったのですか」など、今も未解決であることや事件自体さえも知らない人もいる。新型コロナウイルスの影響で活動の制限は余儀なくされているが、ブログなど会員制交流サイト(SNS)での情報発信など、できる活動を続けている。

 秋の全国交通安全運動初日となった21日に地元のコミュニティーFM「FMクマガヤ」に出演し、情報提供を呼び掛けた様子が新聞記事でも掲載されると、新たな情報提供が寄せられた。「いつどこで誰が情報を目にするか分からない。最後まで全力を尽くしたい」と30日は夕方からチラシを配り、午後6時からはFMクマガヤに再び出演する。

 母親のブログは「《未解決》熊谷市小4男児死亡ひき逃げ事故!」(https://ameblo.jp/kosekitakanori/)。

ツイート シェア シェア