室町幕府滅亡の約１年前の１５７２年に、織田信長が最後の将軍足利義昭の側近、細川藤孝に宛てた書状が見つかったと、熊本大などが６日発表した。藤孝以外の義昭側近らと交流が断絶していると打ち明け「あなたの働きこそが重要」だと主張。畿内の武将を信長方に付けるよう組織化を求めている。専門家は、室町幕府滅亡の過程を解明する重要な手掛かりになるとしている。

　書状は旧熊本藩主、細川家の文化財を管理する永青文庫（東京）で見つかった。同年８月１５日に発出されたとみられ、信長が藤孝に宛てた書状として、これまで発見された中で最古という。

　書状には「今年は京衆（義昭の奉公衆）の誰一人として手紙や贈り物をよこしません」として、信長と奉公衆の関係が断絶していたことが伺える。その上で京都、大阪地域の武将らを「誰であっても、信長に忠節してくれるのであれば、味方に引き入れてください」と働きかけている。

　熊本大の稲葉継陽教授は「室町幕府滅亡に至る政治史を読み解く上で欠かせない事実を、信長自身が語った貴重な書状だ」と強調した。