埼玉新聞

 

<新型コロナ>待ちに待った…喜ぶ飲食店 宣言解除、埼玉も酒提供が解禁 不安も「また感染爆発したら」

  • 緊急事態宣言の解除を受けて、店を再開した「日本酒ダイニング栄三郎」。店主の田中昇さん(右)が来店客に日本酒をサービスしていた=1日午後、さいたま市浦和区岸町

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除され、県内では1日から条件付きで酒類提供が解禁された。飲食店は「待ちに待った」と喜ぶ一方、再びの感染拡大や離れた客が戻って来るかの不安は消えない。

■喜びと客足不安、交錯

 さいたま市浦和区の居酒屋「日本酒ダイニング栄三郎」は1日、店を再開した。店主の田中昇さん(62)は「お客さんと対面して日本酒を薦めることができる環境が戻って来た。すごくうれしい」と話す。県の認証を受けており、要請に基づいて午後8時まで酒類を提供、午後9時まで営業する。今後も制限は続くとみており、「お客さまへの説明は緊張する」と本音を語る。

 酒類提供自粛の要請を受けたときは休業を繰り返した。ランチに冷やし中華を出すなど工夫もしたが、「酒を一滴も出さない居酒屋」に客はほとんど来店しなかった。宣言が適用された8月2日から酒類提供を中止。同月中旬から休業し、店を開けるのは1カ月半ぶりとなる。予約も受け富山県や石川県、長野県などの地酒をそろえた。苦境に立つ酒蔵を支援するためにも、「店を開きながら、情報発信をしていきたい」と意気込む。

 コロナの影響を受けてから1年半以上が経過した。外食や仕事帰りに飲酒する文化に変化が生じているとの懸念は残る。田中さんは「おいしいお酒を通販で取り寄せて、家で飲もうという人が増えている。どれぐらいのお客さまが戻ってくるかは未知数で、すごく不安がある」とも話した。

 同店を約2カ月ぶりに訪れた会社員小暮洋次さん(58)は最初にサービスで出された秋田県の地酒を一口飲んだ。「うま味が強く、好みに近い。日常の一部になっていたのを改めて認識した。じんわりと顔がほころびます」と笑顔。感染防止対策が徹底されており、同店に不安を感じたことはなかったが、「制限解除で店も客も手放しで喜べる状況ではないと思う。ワクチンを打ったから大丈夫ということではない」と指摘していた。

 同市大宮区の南銀座商店街で今月中旬にオープン予定のすしバー「TheGin(ザギン)」。飯野利浩店長(56)は緊急事態宣言解除を受け、「うれしい。ようやく待ちに待ったが、今の率直な気持ち」と声を弾ませる。店は数カ月前までにんにく料理専門店だったが、コロナの影響を受けて閉店。宣言解除に合わせ、和食とお酒を楽しめる店を目指し、開店準備を進める。

 「宣言中は南銀の店も半分以上は明かりが消え、活気のない死んでいるような町だった。飲食店を営む仲間もモチベーションが下がり、希望の見えない状態」と飯野店長は振り返る。解除はうれしい反面、不安も消えない。「大勢でにぎわい、また感染爆発したら今までの苦労が何の意味にもならない。複雑な気持ちもある」と胸の内を明かす。

 店では県が認めた感染対策の認証ステッカーを掲示して営業する予定で、「これまで同様、いやそれ以上に一人一人が感染対策に注意する必要がある。にぎやかな南銀を取り戻すためにも、(宣言解除の)この日からを新たなスタートにできたら」と話していた。

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