【動画】埼玉文学賞、正・準賞の5人祝う さいたまで授賞式 AIで小説や詩を書ける時代…自分の言葉を紡ぐ意義考え 埼玉の文芸の発展へ「貢献できるよう精進」
埼玉新聞社が創設し、埼玉りそな銀行が特別協賛する「彩の国 埼玉りそな銀行 第55回埼玉文学賞」の授賞式が7日、さいたま市中央区のザ・マークグランドホテルで開かれ、小説・詩・短歌・俳句の4部門の正賞・準賞の受賞者を祝福した。
正賞は小説部門で草加市の葭(よし)谷(たに)隼人さん(30)の「層を読む」、短歌部門で鴻巣市の黒沢梓さん(67)=筆名=の「細き首」、俳句部門で上尾市の福嶋すず菜さん(59)=筆名=の「手をつなぐ」。準賞には詩部門で千葉県柏市の渡(わた)会(らい)三男さん(74)=筆名=の「おいでおいで」、所沢市の四宮明美さん(80)=筆名=の「花みずき」が選ばれた。
授賞式には受賞者とその家族ら、県内選出の国会議員や地元企業関係者なども出席。あいさつに立った埼玉りそな銀行の福岡聡社長は、応募作のレベルが年々向上していることに触れ、「埼玉の文化の深さを実感できるまで(文学賞が)成長したことをうれしく思う」と述べ、審査員ら関係者に謝意を表した。
受賞者代表で謝辞を述べた葭谷さんは「AIで小説や詩を書けつつある時代において、自分の言葉で作品を紡ぐことの意義を考えながら、埼玉の文化文芸の発展に貢献できるよう精進したい」と話していた。
■新たな挑戦へ前向き 埼玉文学賞の受賞者5人が交流
「彩の国 埼玉りそな銀行 第55回埼玉文学賞」の懇親会が7日、さいたま市中央区のザ・マークグランドホテルで開かれた。小説、詩、短歌、俳句の正賞・準賞の受賞者5人は、審査員や来賓らと交流。「とても光栄」「意欲が湧いた」と新たな挑戦を決意した。
懇親会に駆け付けた大野元裕知事は「埼玉県の良さ、そして日常の中で大切にしているものを、文学を通じて発信していただきたい」と祝辞を述べた。次いで短歌部門審査員の沖ななもさんが「埼玉文学賞がずっと続いてほしい」と乾杯のあいさつ。
小説部門正賞の葭谷隼人さん(30)は、授賞式の講評で審査員の新津きよみさんに「私もデビューしたのは30歳。若さは武器になる。次は長編に挑戦を」とハッパをかけられた。葭谷さんは「賞をもらう前から長編を書きたいと思っていたので、たぶん書くと思う。いや書きます」と前を向いた。
短歌部門正賞の黒沢梓さん(67)は、短歌仲間が多くの仲間たちにメールで今回の受賞を知らせてくれた。「自分のことのように喜んでくれる仲間がいることがうれしい」。創作に悩んだ時期もあったが、「乗り越えてやってきたかいがあった」と喜んだ。
俳句部門正賞に輝いた福嶋すず菜さん(59)は飛び柄小紋の着物で来場。「お茶仲間が埼玉新聞を取っていて、受賞を先生に伝えてくれた」。交流サイト(SNS)で受賞をつぶやいたところ、「俳句の師匠から『おめでとう』の言葉を頂き、『いいね』も170ほどあった」と反響に驚いていた。
詩部門は準賞が2人。亡くなった母を詩に描いた渡会三男さん(74)は「受賞は本当に光栄。先に逝った人への供養になった。最近、自分でものを書く魅力に目覚めた」と笑顔。白い花が描かれた着物で参加した四宮明美さん(80)。審査員と作品について意見を交わし、「とても勉強になった。今、すごく創作への意欲が湧いて、詩をどんどん書いている」と話した。